あひるのうた 室生犀星
あひる
あひる
さむくはないか水の中。
水をくぐつて
さかなをたべる
あひる
あひる
雪ふるなかで
はねをばたばたさうぢする。
さむくはないか水の中。
従弟従妹たちと祖父母の家に集まっている夢を見た。大学生になったばかりの従妹は、美しい日本の山野を撮影したという見る者の心をずばんと打ってくる写真集を開いて、〈こういう素晴らしい日本をいかに将来のこどもたちに伝えていくか。それを私の仕事にしようと思ってます〉としづかに語って、にこりと笑った。また、従弟(祖母から〈けんご〉君と呼ばれていた)は祖母に、〈この伝統を今度は僕たちが継承していきます〉と言いながら、アルバイト代を貯めたという封筒を厳かに手渡していた。夢から覚めて起きてから、夢の中ではよく知っている彼らだったが、現実には彼らのことをまったく知らないことに気づく。あの穏やかでしっかりとした従弟従妹たちは、いったい誰だったのだろう。不思議だった。
仕事のあと。無性に太宰治を開き太宰のことばに己が精神の救済を託したくなり思い返すも、いまの家には一冊とて太宰はなかった。帰り道の風呂屋で一汗流して、そのまま閉店間際の本屋に立ち寄り、懐かしい太宰の文庫本を二、三冊書棚から抜き出してレジへ運んだ。そう言えば、小学生の頃は父の書棚の太宰の本の背表紙の作者名を「だざいじ」と読んでいた。その頃の私にとって「だざいじ」も「だざいふ」も遠さからいえば大して変わりはなかった。太宰の凄さがわかったのは後年である。
日フィル東京定期演奏会。
広上淳一指揮日フィル
ヴァイオリン独奏:ダニエル・ホープ
エルガー作曲:ヴァイオリン協奏曲ロ短調
メンデルスゾーン作曲:交響曲第3番イ短調〈スコットランド〉
グリエールのハープ協奏曲のスコアを探していることは相変わらずながら、最近、グラズノフの音楽作品もすごく気になっていて、グラズノフの〈演奏会用ワルツ第一番〉がよく脳内で鳴っている。あの不思議で楽しい出だしのところの譜面の書き方を、ササヤ書店で手に入れたスコアからしっかり勉強したい。
偶々聞いた話。朝の連続テレビ小説「まれ」に出ている〈みのり〉役の若い女優さんが、なんでも、私が出た高校の出身らしい、と聞いた。わが母校は気付かない間にいろんな人を輩出しているなあとちょっと嬉しく思った。
枕頭に短歌の材料にならないかと中上健次氏の『日輪の翼』(文春文庫)と『奇蹟』(河出文庫)の二作を積み置きしつつ、なんとはなしの、画像。