短歌7首。
詞書〈アスフィータはその朝、広場のアイスクリーム売りに「今日は私、自分のスプーン持ってきたの、ほら、これよ」と自慢気に見せた。〉
西塔の辺りで大変になつてゐたが冷たいアイスを掬ふ飛行男爵家伝来の匙/河村壽仁
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アスフィータはその朝匙をポケットに忍ばせて門衛にニコッと笑ひぬ
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西塔の辺りは匙の大捜索、その頃匙は掬つてをりアイスを
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その匙はブルネグロ猫の親分の二枚舌からひとつ頂いたもの
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嚔(くしやみ)してゐるであらうなその猫は。どこかは判らねども、月。
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朝の頃に月が出てゐるといふからにきつとそこは夜なのであらう
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舌ひとつ献上しただけなのだつたがと親分の一族に伝はる話
詞書〈仕事に行かねばならぬ。妹が父の具合を知らせてくれる。ラヂオから『羊は安らかに草を食み』が聴こえる〉
あの朝の優しきバッハは変はらぬにこの朝の空のなんぞ悲しき
あの朝の優しきバッハは変はらぬにこの朝の空のなんぞ悲しき
典雅なる朝は来たりてひるがへる少女らの声・樹をわたる風 大辻隆弘(歌集『水廊』所収)
この一首、高等学校で国語を教えられている大辻さんが、なにかの事情で一晩中、学校に留まって仕事をされて、朝を迎えられた場面かなと思いました。
この一首、高等学校で国語を教えられている大辻さんが、なにかの事情で一晩中、学校に留まって仕事をされて、朝を迎えられた場面かなと思いました。
一つの詩。
父は、認知症のために
自分が末期ガンであることを
理解できず
周りにその苦しさをことばで
伝えることが
できない
だから
あまりに痛くて苦しいとき、
怒ったような表情で
外によたよたとやっとの足取りで
飛び出していくしかできなかったのだ
徘徊なんかじゃなかったんだ、と
いまはみんなわかっています
みんな、わんわんと
泣きながら、奇跡が起こってくれるように祈っています
映画「オリエント急行の殺人」の音楽を最近聴きました。軽快で華麗なワルツ。最近亡くなったリチャード・ロドニー・べネットが作曲したそうです。耳にした瞬間に、あれだっと思いました。じつは昔、テレビで放送されたフィギュアスケートの国際大会で海外の女子選手が可憐に踊っていたチャーミングなワルツのことがずっと忘れられなくて、何の曲だろうと思っていました。その当時は番組のなかで音楽の曲名の紹介がなかったように記憶しています。おかげで、すこしだけ心のもやもやがすっきりしました。
今朝、起きて時計を見てすぐにラジオスイッチを入れた。残念ながら野平さんのハープ協奏曲はまさに終わるところで、続けてアルヴォ・ペルト作曲『シンドネ』が始まった。演奏は、下野竜也氏指揮のNHK交響楽団。メイジャーとマイナーの和音が同時に鳴るペルトの音楽は、水を含んで柔らかくなった砥石にしづかに心を研がれる感じ。心が洗われました。
夢を見た。テーブルの上のノートにThe sunset will be hest my own,and the sunrise will be too.と書き付けられていた。hest がわからなかった。
今日の仕事が終わり、仕事場から退散せむと玄関先に出ると激しい雷雨、仕事場の屋根の下でしばらく雨宿りさせてもらいながら小止みを待つも、激しい雷鳴電光と地に叩きつける雨一向に収まる気配なく飛び出せるタイミングなかなか掴めず。今夜は中央郵便局受付のテーブル隅を借りて短歌10首をちょちょちょと詠んで投函するつもりだが、はたしてできるか。