興味深い記事のメモです。
《江戸城天守再建 NPO法人化夢実現へ新たな一歩》
(2006年3月24日 東京新聞記事)
東京都から特定非営利活動法人(NPO法人)の認証を受けた任意団体が22日、東京法務局で法人設立の登記を行った。「江戸城再建を目指す会」(会員255人)。一昨年の発足以来、天守閣を復元して観光立国のシンボルにと、草の根運動を続けてきた。今回の法人化は、夢の実現に向けた新たな一歩となる。
■『江戸城日本再生のシンボルに』
総面積二十一万平方メートルと広大な皇居東御苑。旧江戸城の本丸、二の丸と三の丸の一部を皇居付属庭園として整備し、一九六八年十月から一般公開している。緑鮮やかな芝生の広がる洋風庭園が本丸跡。明暦の大火(一六五七年)で主を失った天守台の石垣も間近い。この上に外観五層(内部六階)、地上からの高さ五十八メートル(大阪城三十メートル)の大天守閣がそびえていた。さぞ壮観だったことだろう。
ここに天守を、との壮大な夢を描き「目指す会」は二〇〇四年十二月に発足した。代表の小竹(おだけ)直隆さん(73)は、旅行業大手JTBの元代表取締役専務。退任後、第三セクター、東京コンベンション・ビジターズ ビューロー専務理事を務め、東京を世界に売り出す仕事に尽力した。その小竹さんが、日本再生の思いを託したのが同会だ。
「バブル崩壊後に赴任した米国で、日本を見る目が一変したのに驚きました。ベトナム戦争後はあこがれと称賛の的だったのに、落ちた偶像と化してしまった。国の姿が揺らいでいるとの思いを強くしました」
自信を失った日本人の心もすさんだが、「観光」というキーワードで「海図なき航海」から脱却できる道が必ずある、と小竹さんは言う。
中国の易経に由来する「観光」。「一産業ではなく、本来は国の光を観(み)ること。国の魅力と不可分の観光は、経済波及効果も大きく、未来に夢と希望を持てる豊かな国づくりにつながります。日本には、国の光をつくる発想がなさすぎました」
政府は、外国人旅行者を増やす政策を掲げるが“磁力”が強くなければ実現はおぼつかない。日本の歴史と文化に培われたキラリと光る宝はないか。東京の魅力をもっと発信できるものはないか。ひらめいたのが「天守閣の再建」だった。
「豊かな文化が息づき、西欧人にも称賛された江戸の街。そのシンボル江戸城は、過去と未来をつなぐ懸け橋であり、日本再生のモニュメントとしてもふさわしい。東京のコンクリートジャングルの景観を一変させ、日本の心、日本人の誇り、アイデンティティーも取り戻せると思います」
小竹さんは、NPO法人化を「内海から大海原に向けて大航海に出発する歴史的な一歩」と評価する。法人は公益性、透明性、継続性が一段と求められる分、社会的な信用と認知度は高まる。会長には元海上保安庁長官で日本観光協会副会長の丹羽晟さん(73)、副会長に元国鉄副総裁の橋元雅司さん(76)が就任、小竹さんは理事長を務める。
来年は太田道灌による築城から五百五十周年。十八代目の子孫太田資暁(すけあき)さん(63)=東京海上日動あんしん生命保険社長=も「一会員として運動を支えたい」と入会した。今後、専門家を交えた勉強会を発足させ、一年がかりで築城プランをつくる。木造で本物通り復元すれば三百-四百億円かかる見込み。一九三一年の大阪城再建の場合、多くは市民の浄財で賄われた。
皇居という立地上の問題なども再建のハードルになる。小竹さんは「三-五年かけて道筋を確かなものにしたい」と話す。いつまでという目標は設けない。草の根運動が国民に浸透するかどうかにかかるからである。
小竹さんは「NPO法人を目指す中で要路の方々と素晴らしい出会いがあり見知らぬ方々から励ましも頂いた。これある限り、国民世論が動きだせば道は開かれると信じ、ひたすら前に進んでいきます」と力強く締めくくった。
童門冬二氏の著作「江戸の都市計画」によると、徳川家康は城造りの名人藤堂高虎に「江戸城の天守閣は、武蔵野につくる新しい富士山だ」と、どこからでも目印となる大天守の造営を命じたという。東京に「富士山」が復活する日は来るか。
「目指す会」の連絡先は、〒171 0021 豊島区西池袋5の11の2の101。
◆メモ <江戸城天守閣>
1607(慶長12)年、二代将軍秀忠の代に完成。その後、大修復され、1638(寛永15)年、三代将軍家光の代に幕府の権威を象徴する最も大きな天守閣が完成。明暦の大火で焼失した翌1658年、天守台を加賀藩前田家が築いた(東西約33メートル、南北約36・5メートル、高さ約12メートル)。しかし、戦乱も終息して治安が保たれていたため、多額の費用がかかる天守閣は再建されなかった。
http://www.tokyo-np.co.jp/00/thatu/20060324/mng_____thatu___000.shtml