珍しく日曜に仕事休みを頂けることになって、今日はPRONTOでソイ・ラテを啜りながらページを繰っている。
珍しく日曜に仕事休みを頂けることになって、今日はPRONTOでソイ・ラテを啜りながらページを繰っている。
庭池の畔(くろ)に古びし墓石あり 刻まれし名は花守湖岸
黒板塀より覗く深木々(ふかきぎ) 標札に墨黒々と〈花守(はなもり)〉とあり
花守湖岸の署名書かれし紙束はひとりの男が森つくる話
向かうの角曲がりて傘の背広来る 花守邸のベルを鳴らして
花守家二十代目も花守湖岸 外の背広へ低く〈帰り給へ〉と
言はれても背広はお辞儀して帰るのみ 銀行名刺をポストへ入れて
二十代目花守湖岸の手元には三十枚目となる銀行名刺
〈再開発・マンション建設〉の名目が花守邸への日参を招(よ)ぶ
庭池の畔(くろ)の墓石に刻まれし初代〈湖岸〉 その名崩れず
その昼も門の背広は一言聞くのみ しづかで低き〈君、帰り給へ〉
母はよく、テレビか新聞記事かで知ったという諏訪中央病院の鎌田實先生の言葉を引き合いに出して、〈親に小さな頃から愛情深く温かく育てられたひとは誰が自分の本当の産みの親かを考えることもそれを切実に知りたいと思うこともない。育ての親への感謝で心が満たされていればそういうものなんだと思うんだけれどね。〉と僕に語った。父は65歳のときに実母から実父の断片的な事実を知らされ、そこからもがき足掻くように、それこそ地べたを這いつくばるようにして父の実父捜しが始まった。悪いことでも良いことでも実父に関することをとにかく知りたいし実父のお墓の前で静かにそっと手を合わせたいんだと父は涙を流しながら頻りに語った。そんな父に母は精一杯寄り添った。父は結局、実父捜しをしながら認知症を発症し、それを悪化させて亡くなった。そして母も、コロナ禍の閉塞した3年間、自分の幼少期からのことをじっくり振り返るなかで自分の実父の存在に気付き、愕然とし、七十代の母なりの実父捜しを始めた。そんな両親を持ってしまった不甲斐ない僕は、土台が実に不確定で揺らぎ易いことこの上ない中で、受け継がれてきたこの命の意味とは何なのだろうといつも考えさせられている。いずれ、シンフォニーか小説か 、何らかの形で昇華成仏させるように仕向けなければならないとも思っているけれども、まだ形は見えない。
吉松隆作曲:交響曲第四番Op.82
https://youtu.be/3zrJFQJhYx4
藤岡幸夫指揮BBCフィル
吉松隆作曲:交響曲第六番「鳥と天使たち」Op.113
https://youtu.be/FVL9npz-qkA
キンボーイシイ指揮新日フィル
今日は、『芸術新潮』2023年5月号(追悼・総力特集:坂本龍一)の発売日。昨日、行き付けのジュンク堂書店に電話してこの『芸術新潮』を確実に入手するにはと尋ねたら、ある程度の冊数は入って来るはずも、煽るわけではないがここのところの話題沸騰で購入希望者殺到も考えられ、一切保証はできぬ故、予約取り置きをされてはどうかと勧められた。
https://www.shinchosha.co.jp/sp/geishin/
今年に入ってから、坂本さんの言葉や音楽を目にし耳にしない日はないくらいに、すっかり取り憑かれている。かなり影響を受けていると思うこの頃。
午前二時きつかりに息を呑む間(ま)ありて決まつて鳴り出す事務所の電話
秋原康三(あきはら)が受話器を取るとソファの上(へ)の毛布ズズズと床にこぼれる
呼吸音とも聴こゆる〈四分三十三秒〉の沈黙のあと通話は切られて
寝られなくなりて珈琲豆を挽き始めぬ ストーブのケトルもピーピー鳴り出し
姫さまの仰がるる夜空思ひつつカップつまんで珈琲揺らす
夜更け過ぎの珈琲の苦さ身に沁みてスバルゆつくり梢を渡る