カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

よいお年をお迎えください。

2018-12-31 00:49:00 | Weblog

今日は、2018年(平成30年)師走大晦日。

みなさま、今年も一年お世話になりましてありがとうございました。どうぞ来たる年が皆様にとって素晴らしい明るい希望に満ちた年になりますように念じております。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 

どうぞ良いお年をお迎えください。

亥年に一首。

飛行艇の影を追ひくる瓜坊をお城の西塔見下ろしてをり  壽

昏れてゆく師走。

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どうしても。

2018-12-29 14:50:52 | Weblog

亥年への短歌がどうしてもできなくて年賀状書きが進まない。。


飛行艇の影を追ひくる瓜坊をお城の西塔見下ろしてをり

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昨晩は。

2018-12-29 10:06:59 | Weblog


昨晩は、しごとのあと、上野の芸大第6ホールで行われた年末恒例の〈澤和樹先生門下の皆様によるフレッシュコンサート〉へ出掛け、ヴィヴァルディ『四季』、ヴォーン・ウィリアムズ『タリスの主題による幻想曲』、レスピーギ『リュートのための古風な舞曲とアリア第三組曲』、〈アンコール〉ジョン・ラター『弦楽のための組曲』から第三楽章「オー、ウェイリー、ウェイリー」のまことに素晴らしい演奏を聴かせて頂きました。こころの洗われる幸せなひとときでした。みなさま、ありがとうございました。


今朝は、服部さんの〈姿見で冷やす手のひら〉の一首にメロディをつけたくなり、メモ。
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〈犬〉。

2018-12-28 07:35:49 | Weblog

 〈町〉へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に秋のある夕方、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。その事実は、大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝しようとしていたメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられ、裁判所へも速やかに報告されたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う〈町〉の裁判所は案の定その犬が〈町〉に入ろうとしていたのか〈町〉から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オルサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所事務棟の木製扉脇の壁に自転車を立て掛けた。検問所事務棟は各壁に其々の窓の大きく取られた石造りの三階建てで、一階の当直室の灯りと、三階の所長室の灯りが、煌々と外に洩れていた。
 制服のオルサブローは幾分俯きながら木製扉の前に立ち、「こんばんは。当直お疲れさまです。オルサブローです。」と軽く三回ほどノックをした。すると、しずかに扉が開いて、検問官の制服に身を包んだやや小柄な少女が顔を出した。それと一緒に外へハーブティーのよい香りがこぼれてきた。「オルサブローさん、たいへんなことになって。とにかく中へお入りくださいな。」彼女は、その夜の深夜当直の三等係官アスフィータだった。オルサブローは、アスフィータに軽く微笑みながら「アスフィータさん、君にもいろいろと心配をかけて済まない。それで、所長はもう部屋に来られているのですか?」と尋ねた。「はい、つい先程部屋に入られました。所長ったら、『〈町〉の裁判所の能天気な奴らと来たらまったく』とぶつぶつこぼしていましたよ。」アスフィータが所長の口真似をすると、オルサブローは思わず吹き出し、アスフィータもくすりと笑った。「ありがとう。では、所長のところへ行ってきます。」オルサブローは、当直室奥の階段を急いで駆け上がって行った。
 その翌朝のことである。〈町〉を取り囲むように広がる森の中にこじんまりと佇む修道院では、たいへん豪勢で荘重なオルガンがひとしきり鳴り響いて朝の礼拝が行われたところだった。オルガンが止むと、小柄で初老の修道士がひとり聖堂の扉を開けて出て来た。彼は明るんだ辺りを見渡して優しく微笑んだ。聖堂の前の木々にはたくさんの小鳥たちが思い思いに枝へ留まって歌をうたっており、そばの薮には狸や兎などの獣たちが息を潜めて音楽に身を委ねている気配があった。彼はしづかに「そうだな、昨日のシンフォニーの続きを書こう。」とひとりごちて、ゆっくりと聖堂の隣の質素な小屋へ入っていった。窓際に机と椅子があり、やや広めの机の上には数本のペンと整然と書き込まれた譜面と、隅にまっさらな五線紙の束が載っていた。修道士は、フンフン、フンフンと軽く鼻唄を洩らしつつ 、椅子にゆっくりと腰を下ろし、机のペンを取り上げた。
 その頃、オルサブローは森の中を時折後ろを振り返りながら息を切らせて駆けていた。先刻まだ辺りの薄暗い中、検問所事務棟を出て、自転車を押しながら家路についたが、〈町〉への入り口の門に差し掛かったところで、〈町〉の方から出てきた〈黒い影〉が突然前に立ち塞がった。オルサブローはえもいわれぬ寒さを覚えて咄嗟に傍らの自転車に跨がり、〈町〉とも検問所事務棟とも反対の森の方へとペダルをぐんぐん漕ぎ出した。〈黒い影〉はひたひたと追ってきた。オルサブローは途中で自転車を乗り捨て、森の中を駆けて逃げた。〈黒い影〉も馴れた足取りで森のなかに入ってきた。複雑に絡み合った大きな木の根はオルサブローの足元に縦横無尽に伸びてともすると彼を躓かせその場に押し留めようとしたが、その度に彼は腕を振って体勢を立て直し根を飛び越えていった。幸い〈黒い影〉との差はそれほど詰まってはこないようだった。そうしながら彼の胸のなかでは、こうして逃げている状況がやはり今一つよくわからぬままではあった。薄暗い森のなかを駆けながらオルサブローは後ろをまた振り返り、根を飛び越えて前方に視線を戻した。木々の間の遥か先の方が明るんでいるのが見えた。
 その頃、アスフィータは、「今日は能天気ども相手に疲れたよ。いつもお疲れさん。ありがとう。君も気をつけて帰るんだぞ」と三階から下りてきたメゲネル所長を見送り、所長室のハーブティのカップを片付けに三階に上がった。所長は、オルサブローの話を聞いてから裁判所へ出掛け、また、検問所へ戻ってなにやら書類をずっと作っていた。アスフィータは、灯りのついたままの所長室に入ると、整然と片付けられた机上を眺めて、カップをお盆に載せ、ドアに戻って軽く一礼をして、灯りを消し部屋を出た。階段をしずかに降りて一階に戻り、アスフィータは、窓の外が白々と明るみ出しているのを見て、ふううと小さく息を吐(つ)いた。
 森のなかでは、オルサブローは、先に見える明るみを目指して駆けていた。明るみはすぐそこだった。「よし」と歯を食い縛り、ぽんとからだを明るみの方に投げ出すと、それまでずっとあった後ろの〈黒い影〉の気配がすううと消えるのを感じた。そこは、森の修道院の聖堂の前だった。

〈続く〉

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昨日、今日。

2018-12-28 07:12:25 | Weblog
昨日は義姉の、今日は末妹の誕生日で、今朝も家族メーリングリストが賑やか。今日は、しごとのあと、夜、澤先生門下のみなさまによるフレッシュコンサートを聴かせて頂く予定。楽しみです。
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さっぱり。

2018-12-26 04:44:04 | Weblog
頭もこころも年末感希薄、世の中見渡してますますひどくなる極悪非道な政治の横行に怒りとため息、そのせいか、亥年への短歌一首はさっぱり浮かんでこない。で、この期に及んで年賀状書き、一切手につかずまったく進まず。夕方すぎにしごとから戻ってきてそのたびに、これはさすがにまずいと思うも、やる気がちっとも湧いてこない。そんな胸の暗がりを覗き込めぱ、五線紙ノートに書き出したいもやもやした音楽の塊が、奥のほうに見える気がする。
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白鳥の湖。

2018-12-25 07:44:20 | Weblog

今朝。どういうわけだか。どこかの客まばらな(ほとんどいない)喫茶店のテラス席に座って本を読んでいたら、突然チャイコフスキーのバレエ音楽『白鳥の湖』のあるフレーズが胸のなかでしきりに流れ出して、むくむくとそれを実際に弾いてみたい思い高まり、目の前にぽんと現れた3オクターブほどの小さな鍵盤楽器でそれを弾き出す夢を見た。

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冬の黄薔薇。

2018-12-24 06:36:53 | Weblog
昨晩は、しごとのあと、どうしても〈水仙と盗聴、わたしが傾くとわたしを巡るわずかなる水〉の一首を見付けたくなって、服部さんの歌集を手に取り、次々とページを繰っていった。それは44ページにあった。ただ実は、その前の36ページの一首が、昨晩は寝床に入ってからもずっとこころに引っ掛かっていた。今朝もまだもやもやと。



権力が人を内から壊しゆく冬の黄薔薇のその壊れかた  服部真里子
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中大オケ。

2018-12-21 07:49:34 | Weblog
昨晩は、初めてミューザ川崎に出掛け、聴くのは初めてとなる佐藤寿一先生指揮中大オケの第80回記念演奏会を聴かせて頂いた。プログラムは、ドヴォルザーク交響詩『真昼の魔女』とマーラー交響曲第五番。ドヴォルザークもすごく良かったけれども、マーラーのあと拍手しながらこれは素晴らしい名演を聴かせて頂いたとひしひしと感じた。コンサート全体がとにかく好演だった。帰り道、年末というと、だいたいは、パブロフの犬よろしくベートーヴェン第九を不思議と聴きたくなるものだが、この年末に関しては、こんかいのこの素晴らしいマーラー5番を聴かせて頂いたからもう満足、第九は不要と感じた。すごく良かった。
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犬。

2018-12-20 16:51:39 | Weblog

 〈町〉へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に秋のある夕方、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。その事実は、大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝しようとしていたメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられ、裁判所へも速やかに報告されたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う〈町〉の裁判所は案の定その犬が〈町〉に入ろうとしていたのか〈町〉から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オルサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所事務棟の木製扉脇の壁に自転車を立て掛けた。検問所事務棟は各壁に其々の窓の大きく取られた石造りの三階建てで、一階の当直室の灯りと、三階の所長室の灯りが、煌々と外に洩れていた。
 制服のオルサブローは幾分俯きながら木製扉の前に立ち、「こんばんは。当直お疲れさまです。オルサブローです。」と軽く三回ほどノックをした。すると、しずかに扉が開いて、検問官の制服に身を包んだやや小柄な少女が顔を出した。それと一緒に外へハーブティーのよい香りがこぼれてきた。「オルサブローさん、たいへんなことになって。とにかく中へお入りくださいな。」彼女は、その夜の深夜当直の三等係官アスフィータだった。オルサブローは、アスフィータに軽く微笑みながら「アスフィータさん、君にもいろいろと心配をかけて済まない。それで、所長はもう部屋に来られているのですか?」と尋ねた。「はい、つい先程部屋に入られました。所長ったら、『〈町〉の裁判所の能天気な奴らと来たらまったく』とぶつぶつこぼしていましたよ。」アスフィータが所長の口真似をすると、オルサブローは思わず吹き出し、アスフィータもくすりと笑った。「ありがとう。では、所長のところへ行ってきます。」オルサブローは、当直室奥の階段を急いで駆け上がって行った。
 その翌朝のことである。〈町〉を取り囲むように広がる森の中にこじんまりと佇む修道院では、たいへん豪勢で荘重なオルガンがひとしきり鳴り響いて朝の礼拝が行われたところだった。オルガンが止むと、小柄で初老の修道士がひとり聖堂の扉を開けて出て来た。彼は明るんだ辺りを見渡して優しく微笑んだ。聖堂の前の木々にはたくさんの小鳥たちが思い思いに枝へ留まって歌をうたっており、そばの薮には狸や兎などの獣たちが息を潜めて音楽に身を委ねている気配があった。彼はしづかに「そうだな、昨日のシンフォニーの続きを書こう。」とひとりごちて、ゆっくりと聖堂の隣の質素な小屋へ入っていった。窓際に机と椅子があり、やや広めの机の上には数本のペンと整然と書き込まれた譜面と、隅にまっさらな五線紙の束が載っていた。修道士は、フンフン、フンフンと軽く鼻唄を洩らしつつ 、椅子にゆっくりと腰を下ろし、机のペンを取り上げた。
 その頃、オルサブローは森の中を時折後ろを振り返りながら息を切らせて駆けていた。先刻まだ辺りの薄暗い中、検問所事務棟を出て、自転車を押しながら家路についたが、〈町〉への入り口の門に差し掛かったところで、〈町〉の方から出てきた〈黒い影〉が突然前に立ち塞がった。オルサブローはえもいわれぬ寒さを覚えて咄嗟に傍らの自転車に跨がり、〈町〉とも検問所事務棟とも反対の森の方へとペダルをぐんぐん漕ぎ出した。〈黒い影〉はひたひたと追ってきた。オルサブローは途中で自転車を乗り捨て、森の中を駆けて逃げた。〈黒い影〉も馴れた足取りで森のなかに入ってきた。複雑に絡み合った大きな木の根はオルサブローの足元に縦横無尽に伸びてともすると彼を躓かせその場に押し留めようとしたが、その度に彼は腕を振って体勢を立て直し根を飛び越えていった。幸い〈黒い影〉との差はそれほど詰まってはこないようだった。そうしながら彼の胸のなかでは、やはり今一つよくわからぬままではあった。薄暗い森のなかを駆けながらオルサブローは後ろをまた振り返り、根を飛び越えて前方に視線を戻した。木々の間の遥か先の方が明るんでいるのが見えた。
 その頃、アスフィータは、「今日は能天気ども相手に疲れたよ。いつもお疲れさん。ありがとう。君も気をつけて帰るんだぞ」と三階から下りてきたメゲネル所長を見送り、所長室のハーブティのカップを片付けに三階に上がった。所長は、オルサブローの話を聞いてから裁判所へ出掛け、また、検問所へ戻ってなにやら書類をずっと作っていた。アスフィータは、灯りのついたままの所長室に入ると、整然と片付けられた机上を眺めて、カップをお盆に載せ、ドアに戻って軽く一礼をして、灯りを消し部屋を出た。

 

〈続く〉

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