カームラサンの奥之院興廃記

好きな音楽のこと、惹かれる短歌のことなどを、気の向くままに綴っていきます。

昨日。

2016-05-31 15:13:30 | Weblog

昨日は、ここのところずっと気掛かりなことがあったので、しごとのあとで病院へ掛かり先生に患部を診て頂いて薬を貰った。ひとまずほっとして、それから、近所の現代短歌社へ立ち寄り、角宮先生と高野さんの第1歌集文庫を購入。角宮先生とは、ご生前一度だけ手紙をやりとりさせて頂くご縁があった。2000年の夏だったと思うが、先生から突然にご丁寧な手紙を頂いた。その少し前に私が角川短歌に投稿した短歌をご覧になってのお手紙だった。それはこちらが恐縮してしまう内容で、すぐにお返事を書いたが、そのときの私は恥ずかしながら先生が前田透先生門下の高弟でいらしたことも先生の代表作品の数々のこともよく知らなかった。

馭者は来て夜更けの広場月明へ葡萄の籠をおろしはじめる  角宮悦子(第1歌集『ある緩徐調』所収)


しごと休みを頂いた今日は、喫茶店に出掛け、角宮先生の第1歌集をぱらぱら開きながら、ノートに少しずつブルネグロのことを書き綴っています。そんな長閑で幸せな午後のひとときです。

喫茶店を出てからは、穴八幡や松聲閣辺りを散策。 木立から聴こえてきたメロディ。

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短歌メモから。

2016-05-31 01:45:13 | Weblog
短歌メモから。

極楽鳥郵便局の私書箱棚から溢れてゆく王党派〈メロン〉宛大型封筒


夕暮れの運河へ下りる石壁に王党派〈メロン〉のパセリ型発信器
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ブルネグロ。

2016-05-29 23:31:45 | Weblog
町へのただ一つの入り口の検問所脇の側溝に夏のある晩、薄汚れた犬が死んでいたことがあった。事実は大きめのぶかぶかな毛糸靴下を履いて就寝中のメゲネル検問所長のもとにすぐに伝えられたが、酒精で脂ぎった不夜城のごときお歴々の集う町の裁判所は案の定その犬が町に入ろうとしていたのか町から出ようとしていたのかを朝までおいてはおかれぬ大問題とし、検問所長に事実を直ちに判事の前で詳細に説明せよと出頭命令を下したので、犬の第一発見者たる検問所三等係官オータサブローはその夜のうちに寝室兼書斎代わりの家の物置から検問所に呼び出され、検問所の木製扉に自転車を立て掛けた。


湾の対岸の町の中心にあるブルネグロ飛行男爵邸の庭にこの秋も紫の美しい大ぶりな茄子がたわわに実ったのでいちど遊びにきませんか、とガラナが手紙で知らせてくれた夕方、書斎机を離れて円形窓を伝ってベランダに抜け出すと、対岸の町はまるでペンキを被ったかのようにオレンジ色に染まっていた。


夕飯は、近場の野山で採れた旬の食材たちを当家のタラコフ料理長が腕によりをかけてアレンジしてくれた食卓だった。旧友の三等官Sから来た、昨秋ブルネグロ湾に臨む自邸テラス菜園で実った大振りの見事な茄子で作ってみたという、瑞々しく美しい青色のワインを開け、客人の舞踏子爵、飛行男爵らと乾杯し、一杯二杯と頂いた。喉越しのすっきりとした、それでいてフルーティーな優しくて深い味わいの本当に美味しいワインで、娘のマレーナが次々に弾いてくれるラフマニノフの演奏とも相俟って気分よく盃が進み、結局ワインを二本追加した。料理が終わる頃には、その日の昼間の疲れもあってか珍しくかなり酔いがまわり、起きていることができなくなって、早々に床に就いた。
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塚本さんの〈カフカ忌の郵便局〉。

2016-05-29 04:27:33 | Weblog

メモ。


カフカ忌の無人郵便局灼けて頼信紙のうすみどりの格子  塚本邦雄(第5歌集『緑色研究』所収)


塚本さんのそれに対して、私に降りてきたのは〈極楽鳥郵便局〉のイメージ。

極楽鳥郵便局の私書箱棚から溢れてゆく王党派〈メロン〉宛大型封筒

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短歌メモから。

2016-05-28 23:18:52 | Weblog
短歌メモから。

極楽鳥郵便局の私書箱棚から溢れてゆく王党派〈メロン〉宛大型封筒
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短歌読みその3。

2016-05-28 10:34:20 | Weblog

猫の眼をしている君はきまじめで魔法使いになりそこなった  海老茶ちよ子(歌誌『塔』2016年5月号177頁)

一日一刻の景色や様相が絶え間なく劇的に変貌変容してゆくかけがえのない季節を瑞々しく掬いあげた一首。『魔女の宅急便』に出てくる少女キキと黒猫ジジのことをなんとなく思い出した。作中主体は、無事に〈魔法使い〉になれたのだが、〈猫の眼をしている君〉は〈きまじめ〉な性格ゆえに〈魔法使いになりそこなった〉という。〈なりそこなった〉とあっさり言い切る詠いぶりがこの作品の持ち味、魅力かもしれない。惹かれました。

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短歌読みその2。

2016-05-28 09:16:08 | Weblog
探偵の話す言葉は蝶ほどの翳りがありて熱の身を浸す  山内頌子(歌誌『塔』2016年5月号26頁)

〈探偵〉への依頼内容で普通に思い浮かぶのは素行や身上の調査。この一首ではもしかしたら作中主体の〈原因不明不可解な発熱の理由〉が調査依頼されているのかもしれない。勝手に想像を逞しくすると、源氏物語の六条御息所のような人物からの〈呪い〉によるような、ただならぬ〈発熱〉かもしれない。〈探偵の話す言葉は蝶ほどの翳りがありて〉が非常に物語的。
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短歌読み。

2016-05-28 07:23:42 | Weblog

見たことのある自転車が国道の脇に倒れて雨に濡れをり  新井蜜(歌誌『塔』2016年5月号133頁)

自転車と雨のうた。高野公彦氏の有名な〈白き霧ながるる夜の草の園に自転車はほそきつばさ濡れたり〉を思い出した。新井さんの〈見たことのある自転車〉はもしかしたら高野氏の詠まれた〈自転車〉だったかもしれない。

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金曜日の午後。

2016-05-26 07:16:09 | Weblog
今週の金曜日の午後に、ラジオで冨田勲さん追悼特別番組が放送されるそうです。

冨田さんといえば、『ジャングル大帝』エンディングテーマ曲の印象が鮮烈です。三歳ぐらいのときにテレビで初めて聞いて、その音楽の格好良さにショックを受けました。
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初めて詠んだ一首。

2016-05-24 17:59:10 | Weblog

あなたが初めて詠んだ短歌はどんな一首でしたか、とある日突然だれかに訊かれたとしたら、私はその一首を詠んだときのことを今でもよく憶えているので次のように答えるかもしれません。それは16歳の夏で、ちょうど祖母が胃の全摘手術を受けたあとでした。たまたま近藤芳美さんの随筆を読んでいました。そこに無名者の短歌作品がたくさん掲載されていて、その短歌をみているうち自分も無性に短歌を詠みたくなり、手近なチラシの裏に書き留めた一首がそうです、と。


〈祈りの譜〉を祖母に捧げむ一心にリコーダーを吹く重き昼間


そのあと、突然どういう巡り合わせか瞬間的にこのように開花した私の短歌脳も長い眠りにはいり、たまたま毎日新聞紙上の短歌コラムで河野裕子先生の〈たつぷりと真水を抱きてしづもれる昏き器を近江と言へり〉の一首に出会って唐突に無性に短歌を詠みたくなり手近なチラシ裏に〈星沈む夜更け過ぎまで語り合ひぬバックに亡ききみのチェロを流して〉をメモした29歳まで、私は短歌の〈た〉の字もない生活を送りました。

 

いまこれまでを振り返って短歌との付き合いを思うと、本当に不思議です。

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