アンサンブル東風の演奏会を聴いてきました。
☆
『アンサンブル東風(こち) 第7回定期演奏会』
~〈東風が運ぶアジアの響き〉~
日時:2006年2月11日(土・祝)午後2時開演/午後1時30分開場
会場:旧東京音楽学校奏楽堂(上野公園内)
【演奏曲目】
A.ボロディン作曲(編曲=渡邊 加代子):韃靼人の踊り(歌劇『イーゴリ公』より)
マウンマウン・ゾー・ティエ作曲:伝統の旋律(2005)
(サウンガウク(竪琴)ソロ=マウンマウン・ゾー・ティエ)
アンコール曲:ティラミラン(きれいな風景、の意)<ミャンマー民謡>
(サウンガウク(竪琴)ソロ=マウンマウン・ゾー・ティエ)
矍 小松(QU Xiao Song)作曲:声と楽器のための「モン・ドン」(1984)
(声=駒田敏章)
尹 伊桑作曲:室内交響曲第2番(1989)
指 揮:松下功
演 奏:アンサンブル東風(こち)
☆
コンサートプログラムから。
《~曲目解説~ 松下功》
A.ボロディン作曲(編曲=渡邊 加代子):韃靼人の踊り(歌劇『イーゴリ公』より)
<アンサンブル東風>は、これまでに古典の交響曲から超絶技巧の現代作品、お寺での演奏会、子供たちのための音楽会等など、実にさまざまな活動を行ってきています。一つのジャンルに囚われることなく、音楽の喜びを多面的に捉えて表現しようという思いから、名曲を積極的に我々の編成に合わせた編曲で演奏し続けています。このアンサンブル東風の名曲シリーズ第5弾は、ボロディンの『韃靼人の踊り』です。ボロディンは、『中央アジアの草原にて』の作曲者としても知られる作曲家ですが、作曲技術は独学で身につけ、普段は化学者として活躍していました。それゆえか美しくエキゾチックな旋律には自由な発想が見られ、心奪われるものがあります。
マウンマウン・ゾー・ティエ作曲:伝統の旋律(2005)
マウンマウン君に初めて出会ったのは、2003年のアンサンブル東風ミャンマー公演の時でした。彼は民族服に身を包み、澄んだ目をした、人当たりのいい好青年で、我々とは会ってすぐに打ち解けて、たちどころによい仲間になりました。彼は現在、東京藝術大学大学院作曲科に留学していますが、この3月で予定していた勉強が終わり、帰国することになっています。ミャンマーは、サウンガウク(竪琴)、パットワインなど独自な伝統音楽の演奏が盛んですが、西洋音楽の受容はまだまだこれからという状況です。そんな中で、彼は、ミャンマー初の海外への音楽留学生として日本に来ました。そして、日本に滞在中に、作曲の勉強だけでなく、アマチュア・オーケストラに入ってヴィオラを演奏し、また芸大バッハ・カンタータクラブで合唱パートを担当するなど、実に多くの音楽を吸収してきました。今回これから演奏する作品は、ミャンマーの代表的な民族楽器・サウンガウク(竪琴)、弦楽四重奏(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)と打楽器のための作品で、ミャンマーの旋律・リズムと西洋的な和音との融合を試みた作品です。私たちの見た、あのミャンマーの原風景を彷彿とさせられる秀作です。
矍 小松(QU Xiao Song)作曲:声と楽器のための「モン・ドン」(1984)
アジアの作曲家たちといえば、中国の作曲家たちの昨今の活躍には目を見張らせるものがあります。矍小松は、盾譚(Tan Dun)と同世代の作曲家で、北京中央音楽学院で学び、アメリカで活躍し、その後上海音楽院で後進の指導にあたりました。現在は、再び北京を中心に活動を行っています。この『モンドン』は、彼のデビュー作であり、男声のファルセットから始まる冒頭から、楽器奏者たちが声を発する後半部分まで、エキサイティングに時が刻まれていきます。アジアの躍動感を巧みに表現したダイナミックな音楽です。
尹 伊桑作曲:室内交響曲第2番(1989)
第二次世界大戦後の激動の時代を音楽と闘争の中で生き、アジアの魂を力強く訴えた作曲家、それは尹伊桑でしょう。彼は、常に韓国伝統音楽と伝統文化に魂の根を置きながら、いわゆる現代音楽の書法を用いて、韓国の伝統楽器のための音楽ではなくて、西洋楽器のための音楽として、世界へと発信する音楽を書き続けました。彼の音楽はいつも時代を的確に捉えていました。
3つの楽章からなる『室内交響曲第2番』は、フランクフルトでL.ツァゴルチェック(Zagrosek)指揮、アンサンブル・モデルンにより初演された作品です。すべての楽器に超絶技巧的な部分があり、その音は常に揺れ動く尹伊桑独特な表現で書かれています。この作品は、尹伊桑晩年の力作の一つといってよく、伝統と現代とをつねに見据えて創作を行った彼の真摯な眼差しを思い起こさせる作品です。
☆
アンサンブル東風の編成は、弦楽五重奏(VnⅠ、VnⅡ、Va、Vc、Cb)に管打楽器などがくっついた小さな規模の編成ですが、今日演奏されたどの曲についてもそのようなことを一切感じさせない迫力と熱気に満ちた演奏だったと思います。素敵な演奏でした。
ボロディンの曲は、編曲がとにかく素敵で、美しいうたと迫力ある響きが素晴らしかったです。マウンマウン作品は、こんどはぜひ通常のオーケストラとサウンガウク(竪琴)のコンチェルトとしてこの曲を聴いてみたいと思わせる素敵な魅力的な音楽でした。矍小松作品は、野山で鳴きつづける鳥の声を思わせるピッコロの長いパッセージと、声のパフォーマンスが印象的でした。面白かったです。尹伊桑の『室内交響曲第2番』は、初めて聴きました。全体に非常に聴きやすい音楽だと思いました。ことに第二楽章の美しさに惹かれました。
非常に楽しめたコンサートでした。よかったです。
☆
演奏会情報。
『アンサンブル東風(こち) 第8回定期演奏会』
~〈ヴィルトゥオーゾ 古今東西〉~
日時:2007年2月10日(土)午後2時開演予定
会場:旧東京音楽学校奏楽堂(上野公園内)
【演奏予定曲目】
グリンカ作曲:歌劇『ルスランとリュドミーラ』序曲
朴銀荷作曲:トロンボーン協奏曲(委嘱作品・世界初演)
(トロンボーンソロ=加藤直明)
シュニトケ作曲:チェロと7つの楽器のためのディアローグ
(チェロソロ=松本卓以)
クセナキス作曲:タッレイン
☆
楽しみです。
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『アンサンブル東風(こち) 第7回定期演奏会』
~〈東風が運ぶアジアの響き〉~
日時:2006年2月11日(土・祝)午後2時開演/午後1時30分開場
会場:旧東京音楽学校奏楽堂(上野公園内)
【演奏曲目】
A.ボロディン作曲(編曲=渡邊 加代子):韃靼人の踊り(歌劇『イーゴリ公』より)
マウンマウン・ゾー・ティエ作曲:伝統の旋律(2005)
(サウンガウク(竪琴)ソロ=マウンマウン・ゾー・ティエ)
アンコール曲:ティラミラン(きれいな風景、の意)<ミャンマー民謡>
(サウンガウク(竪琴)ソロ=マウンマウン・ゾー・ティエ)
矍 小松(QU Xiao Song)作曲:声と楽器のための「モン・ドン」(1984)
(声=駒田敏章)
尹 伊桑作曲:室内交響曲第2番(1989)
指 揮:松下功
演 奏:アンサンブル東風(こち)
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コンサートプログラムから。
《~曲目解説~ 松下功》
A.ボロディン作曲(編曲=渡邊 加代子):韃靼人の踊り(歌劇『イーゴリ公』より)
<アンサンブル東風>は、これまでに古典の交響曲から超絶技巧の現代作品、お寺での演奏会、子供たちのための音楽会等など、実にさまざまな活動を行ってきています。一つのジャンルに囚われることなく、音楽の喜びを多面的に捉えて表現しようという思いから、名曲を積極的に我々の編成に合わせた編曲で演奏し続けています。このアンサンブル東風の名曲シリーズ第5弾は、ボロディンの『韃靼人の踊り』です。ボロディンは、『中央アジアの草原にて』の作曲者としても知られる作曲家ですが、作曲技術は独学で身につけ、普段は化学者として活躍していました。それゆえか美しくエキゾチックな旋律には自由な発想が見られ、心奪われるものがあります。
マウンマウン・ゾー・ティエ作曲:伝統の旋律(2005)
マウンマウン君に初めて出会ったのは、2003年のアンサンブル東風ミャンマー公演の時でした。彼は民族服に身を包み、澄んだ目をした、人当たりのいい好青年で、我々とは会ってすぐに打ち解けて、たちどころによい仲間になりました。彼は現在、東京藝術大学大学院作曲科に留学していますが、この3月で予定していた勉強が終わり、帰国することになっています。ミャンマーは、サウンガウク(竪琴)、パットワインなど独自な伝統音楽の演奏が盛んですが、西洋音楽の受容はまだまだこれからという状況です。そんな中で、彼は、ミャンマー初の海外への音楽留学生として日本に来ました。そして、日本に滞在中に、作曲の勉強だけでなく、アマチュア・オーケストラに入ってヴィオラを演奏し、また芸大バッハ・カンタータクラブで合唱パートを担当するなど、実に多くの音楽を吸収してきました。今回これから演奏する作品は、ミャンマーの代表的な民族楽器・サウンガウク(竪琴)、弦楽四重奏(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)と打楽器のための作品で、ミャンマーの旋律・リズムと西洋的な和音との融合を試みた作品です。私たちの見た、あのミャンマーの原風景を彷彿とさせられる秀作です。
矍 小松(QU Xiao Song)作曲:声と楽器のための「モン・ドン」(1984)
アジアの作曲家たちといえば、中国の作曲家たちの昨今の活躍には目を見張らせるものがあります。矍小松は、盾譚(Tan Dun)と同世代の作曲家で、北京中央音楽学院で学び、アメリカで活躍し、その後上海音楽院で後進の指導にあたりました。現在は、再び北京を中心に活動を行っています。この『モンドン』は、彼のデビュー作であり、男声のファルセットから始まる冒頭から、楽器奏者たちが声を発する後半部分まで、エキサイティングに時が刻まれていきます。アジアの躍動感を巧みに表現したダイナミックな音楽です。
尹 伊桑作曲:室内交響曲第2番(1989)
第二次世界大戦後の激動の時代を音楽と闘争の中で生き、アジアの魂を力強く訴えた作曲家、それは尹伊桑でしょう。彼は、常に韓国伝統音楽と伝統文化に魂の根を置きながら、いわゆる現代音楽の書法を用いて、韓国の伝統楽器のための音楽ではなくて、西洋楽器のための音楽として、世界へと発信する音楽を書き続けました。彼の音楽はいつも時代を的確に捉えていました。
3つの楽章からなる『室内交響曲第2番』は、フランクフルトでL.ツァゴルチェック(Zagrosek)指揮、アンサンブル・モデルンにより初演された作品です。すべての楽器に超絶技巧的な部分があり、その音は常に揺れ動く尹伊桑独特な表現で書かれています。この作品は、尹伊桑晩年の力作の一つといってよく、伝統と現代とをつねに見据えて創作を行った彼の真摯な眼差しを思い起こさせる作品です。
☆
アンサンブル東風の編成は、弦楽五重奏(VnⅠ、VnⅡ、Va、Vc、Cb)に管打楽器などがくっついた小さな規模の編成ですが、今日演奏されたどの曲についてもそのようなことを一切感じさせない迫力と熱気に満ちた演奏だったと思います。素敵な演奏でした。
ボロディンの曲は、編曲がとにかく素敵で、美しいうたと迫力ある響きが素晴らしかったです。マウンマウン作品は、こんどはぜひ通常のオーケストラとサウンガウク(竪琴)のコンチェルトとしてこの曲を聴いてみたいと思わせる素敵な魅力的な音楽でした。矍小松作品は、野山で鳴きつづける鳥の声を思わせるピッコロの長いパッセージと、声のパフォーマンスが印象的でした。面白かったです。尹伊桑の『室内交響曲第2番』は、初めて聴きました。全体に非常に聴きやすい音楽だと思いました。ことに第二楽章の美しさに惹かれました。
非常に楽しめたコンサートでした。よかったです。
☆
演奏会情報。
『アンサンブル東風(こち) 第8回定期演奏会』
~〈ヴィルトゥオーゾ 古今東西〉~
日時:2007年2月10日(土)午後2時開演予定
会場:旧東京音楽学校奏楽堂(上野公園内)
【演奏予定曲目】
グリンカ作曲:歌劇『ルスランとリュドミーラ』序曲
朴銀荷作曲:トロンボーン協奏曲(委嘱作品・世界初演)
(トロンボーンソロ=加藤直明)
シュニトケ作曲:チェロと7つの楽器のためのディアローグ
(チェロソロ=松本卓以)
クセナキス作曲:タッレイン
☆
楽しみです。