晴れ時々スターウォッチング

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96P/マックホルツ第1周期彗星(96P/Machholz 1)

2023年01月30日 | 彗星
2023年見たい天体現象「2023年に明るくなる彗星」で紹介した96P/マックホルツ第1周期彗星(1/31に近日点通過)がSOHO LASCO C3 の視野内に入ってきたようです。

 本来 LASCO C3 の視野に写り込む彗星は太陽に突入するサングレージング彗星と言われるものがほとんどですが、96P/Machholz 1 のような短周期彗星が写るのは非常に希なことです。というよりはナンバー/Pの称号が付いた彗星では、96P/Machholz 1 がLASCO C3 に写り込むただ一つのほうき星です。

 その理由は 96P/Machholz 1 彗星の特異性にあります。96Pの周期は5.28年ですが、近日点距離は0.12AUで番号付き短周期彗星の中では最も近距離です。さらに軌道も変わっていて、異常なほど高い軌道傾斜角と高い離心率の両方を持つ唯一の短周期彗星となっています。


 さらに特筆すべきは彗星の化学組成が既知の彗星とは全く違う点です。96Pは1986年の発見から毎回帰ごとに観測されているため詳しい組成が分かっていますが、その観測によると太陽系の他の彗星では普通にある炭素とシアンが96Pでは異常なほど少ない結果が出ています。

 そのため、96P/Machholz 1 はエイリアン(太陽系外からやって来て取り込まれた)彗星ではないかと考えられているようです。もっとも、シアンが少ない理由としては、何度も太陽にあぶられたため揮発したという仮説とカイパーベルトの最も外側の非常に寒い領域で形成されたという仮説もありますが、軌道の特異性から太陽系外からやって来て木星に捕まったという考えは納得いくものでもありますね。

 炭素とシアンが少ないホントの理由は分かりませんが、直径6kmのこのほうき星は今回の近日点通過でも消滅することなく日の出前の東の空にやって来るはずです。近日点通過は2023年1月31日のはずですが、上記軌道図では2月6日に最も太陽に近づくシミュレーションになっています。正確な近日点通過日は分かりませんが、SOHO LASCO C3 image で見ることができますのでここ数日は96P/Machholz 1 ウォッチングを楽しむことにしましょう。
(SOHOのWeb pageはこちら→https://soho.nascom.nasa.gov/data/realtime-images.html

〈1/31 追記〉
1月29日14時~1月31日07時(JST)の様子


〈2/2 追記〉
1月29日9時54分~2月2日0時54分(JST)の様子


〈CME放出の様子〉
2月1日14時54分~2月2日0時54分(JST)

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2 コメント

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Unknown (ich)
2023-02-01 21:48:40
晴れスターさん
 マックホルツ彗星が、軌道も組成も特異なものとは知りませんでした。SOHOのGIF動画を見ると、これはクロイツ族!という姿に見えます。いろいろあるものですね~。
 さて、私も今年期待している彗星があります。2P/エンケ彗星です。小学生のとき、エンケ彗星に乗って太陽系を旅するという本が図書室にありまして…。初めて見たのが2013年なので3回帰前でしょうか、10年前ですね!回帰の度に見たいと思うのですが、なかなか条件が良くなりません。今年はどうでしょう?
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2P/エンケ彗星 (晴れスター)
2023-02-02 12:39:46
ichさん
 96Pマックホルツ彗星は次回の近日点通過時(2028年6月16日)に地球に0.32AUまで近づくのでステラナビで確認したところ光度は10等級でした。それに比べると今回のZTF彗星は明るかったんだなと今更ながらに思いました。今年の2P/エンケは近日点通過5日前の明るさが5等級なので2013年の回帰と条件が似ていると思いますよ。条件良さそうですね。
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