晴れ時々スターウォッチング

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地球の影に入る中国宇宙ステーション(CSS)

2022年10月12日 | CSS(中国宇宙ステーション)
7月24日に実験棟モジュール(問天・Wentian)がドッキングして明るくなったCSSをウオッチングしてみた。実験棟がドッキングする前のCSS光度は1等級だが、現在の最大光度は-2等級オーバーである。

 CSSを眼視で観望できたのは10月8日の18時30分を過ぎたころ…

南西方向から現われたCSSは高度を増すにつれてどんどん増光し高度50°で最大光度-1.9等に達したあと地球の影に入ってすっと見えなくなった。かなり明るい… 正直な感想としてCSSがこれほど明るくなっているとは思ってなかった。-1.9等級は単純計算で1等級の約40倍の明るさだがそれを納得させるのに十分な増光ぶりだった。


 はてさて、ドッキングしただけで中国宇宙ステーションの輝きを40倍も明るくさせた科学実験モジュール(問天)とはいったいどのようなものなのか? 興味がわいたので深掘りしてみた。


 問天は全長約18mの科学実験モジュールだが、天和ドッキングポートにあるエアロックよりかなり広めの船外活動用エアロックや天和コアモジュールのバックアップ機能(ナビゲーションアビオニクスや推進装置)なども備えている機能満載の宇宙船だ。

 おもな装備品は図のとおりだがひとつISSには無い装備品があるので注目したい。その名はインデックスロボットアーム。ドッキングポートに装備されている再ドッキング自動システムだ。

 これは何をするものかというと、進行方向前方にドッキングした問天を右舷ポートに引っ越しさせるためのマジックハンドのような働きをする装置だ。

↓ 2022年7月時点での中国宇宙ステーション(7月24日ドッキング完了)


↓ 2022年10月現在の中国宇宙ステーション(9月30日に引っ越しました~)

 再ドッキングはクルードラゴンでもソユーズでもISSを離れたあとにスラスターを噴射させて再ドックするものだがこの装置はスラスターを噴射させることなく、少々乱暴な言い方で表現するとロボットアームでモジュールを引っこ抜いて別のポートに差し込むというやり方である。

 9月30日に行われた再ドッキングの様子

↑ 左が問天、右が天和ドッキングポート

↑ 左に見えるのが6月5日にドッキングした有人宇宙船神舟14号、右が問天

 さて、この聞き慣れないインデックスロボットアーム(再ドッキング自動システム)だが、これはミール宇宙ステーションで使用されたリアッパアームを元にしていると考えられる。↓

 ミールの建造ではクバント2、クリスタル、スペクトル、プリロダの各モジュールにリアッパアームと呼ばれる再ドッキング自動システムを装備して、ミールコアモジュールの前方(軸方向)ポートにドッキングしたモジュールをこのアームで持ち上げて各ポートへと移動させた。

↑ クバント2のポート移動(再ドッキング)の様子

 さて、話を中国宇宙ステーションに戻そう。中国宇宙ステーションは今後、左舷ポートに2つめの科学実験モジュール(夢天・Mengtian)をドッキングさせてとりあえずの完成となる。(最終的にはCSS近傍に宇宙望遠鏡を配置する計画があるのでそれをもってシステム完了となる予定だ)

 直近の情報によると夢天を打上げる長征5号ロケット(CZ5B)は10月31日にリフトオフするようだ。ローンチウインドウは10/31~11/5で時刻はいずれも06:00~12:00(UTC)となっている。問天と同じように最初は天和前方モジュールにドックさせてのちに左舷ポートへと再ドックする。

 夢天を打上げるロケットは長征5号(CZ5B)なので、制御装置を装備していなければ、またしても「どこに落下するのか問題」が勃発しそうだ。そうならないことを切に願う。

 無人貨物宇宙船天州5号(Tianzhou-5)は11月6日に、有人宇宙船神舟15号(Shenzhou-15)は11月26日にリフトオフする予定となっている。