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土星の白斑発生30年説?

2020年09月12日 | 土星
 昔の天文雑誌を見ていたら「土星の白斑発生30年説」という興味深い話題が載っていたので、ちょっとだけ深掘りしてみました。

 記事によると「土星の赤道地域に小さな白斑が出現することはよく知られているが、ごくたまに大嵐ともいえる大規模な白斑が赤道地域に出現することがある」とのこと。

 赤道地域の大嵐は土星が遠日点を通過してから数年以内に起きていることから、土星の公転周期約29年を周期とする「白斑発生30年説」が生まれたようです。では実際はどうだったのか観測結果を見てみましょう。

 近年の土星の遠日点と大規模白斑出現年は下記のとおりです。

土星の遠日点(公転周期29年)     大規模白斑の出現年(遠日点通過から…)
1900年 7月 9日     →   1903年(3年後)
1929年11月11日     →   1933年(4年後)
1959年 5月29日     →   1960年(1年後)
1988年 9月11日     →   1990年(2年後)
2018年 4月17日     →      ?

 なるほど、これを見ると約30年周期で大規模白斑が発生していることが分かります。

 ということは、現在土星で大きな白斑は発生していませんが、2018年の遠日点通過から2年が過ぎているのでそろそろ大規模な白斑が発生する可能性があるということになります。12月には土星と木星の大接近という一大イベントもありますが2020年後半は土星の白斑出現にも要注意ですね。

 ところで、大規模白斑の発生周期には30年説のほかに57年説があります。



HUBBLE ⒸNASA

 これは1990年に発生した大嵐をハッブル宇宙望遠鏡が撮影したものです。この時は白斑が土星を一周してぐるりと取り巻いたそうです。これと同規模の大嵐が発生したのは1933年のみで他の年には出現しなかったそうです。



HUBBLE ⒸNASA

 このことから、土星を一周するほどの大規模嵐が57年周期で発生するのではと考えられています。次の遠日点通過は2047年頃なので発生するとしたらその数年後ですかね~。ちょっと未来過ぎる話ですね。

 さて、周期的に大規模白斑が発生することは分かりましたが、そのメカニズムも気になります。そのメカニズムについては2015年の英科学誌「ネイチャー・ジオサイエンス(Nature Geoscience)」に現象の謎を解明したという内容の研究論文が発表されています。

 それによると、土星の大気は地球と同様に性質の異なる層で構成されており、雲が形成される密度の低い「外層」が、「高密度の混合大気(水素やヘリウム、水などの分子が主成分)」の上にのっている状態になっていて常に安定状態にあるそうです。そのため土星の外層は下部のより温かい空気の上昇を妨げる作用があり安定した状態を長期にわたって維持するそうです。

 しかし、これは「嵐の前の静けさ」だと米カリフォルニア工科大学の研究チームの Cheng Li 氏と Andrew Ingersoll 氏は述べています。

 外層大気は常に宇宙空間に熱を放射しているため徐々に気温が下がり、ついには下部の雲下層より密度が高い状態になる。これにより2層間の均衡が崩れて下部に閉じ込められていた暖かい空気が外層へとあふれ出す現象が起きるそうです。それが大規模な土星の嵐です。

 大嵐によってかき混ぜられた大気には他の分子より重い水分子が含まれているため、これが巨大嵐で雨として落ちることで元の平衡状態が回復し、また静けさが戻るという仕組みだそうです。

 Cheng Li 氏は「惑星がどのくらいのペースで宇宙空間に熱を放射して冷却できるかによって時間スケールは決まる。土星は巨大な大気圏を持つので、冷却には数十年を要する」と述べています。

 この研究論文には発生場所となる遠日点との相関関係については触れていませんが、太陽から受けるエネルギーが一番小さくなる遠日点が一つの引き金になっているのかもしれませんね。

 30年に1回発生する巨大嵐と土星に降り注ぐ大雨とは…とてもスケールの大きな話ですね。土星はいつ見ても木星ほどの変化はないのであっさり見ていましたが、この話を知ってじっくり眺めてみたくなりました。週間予報では月曜日の夜に雲が切れそうなのでウオッチングしてみることにしましょう。