当院は予約制にしていない。高齢者が六割の医院では予約は混乱を招き、受付の負担が増えると危惧するからだ。病院の様に予約なのに一時間待たせたり、二時間待たせてもお待たせしましたで済むところはいい。駅前医院ではそうはいかない。
総合病院で待たされたと憤懣やりかたない患者さんには、大変でしたねとか検査がありますからねと合いの手を入れている。診る方の医師も二時三時まで昼食抜きで大変なんですよとは言わない。
年末になると突然どっと患者が押し寄せることがある。
「なんで今日はこんなに混んでるんだ、もう一時間待った」と言う声が中待ちから聞こえる。三十分以上待たせると開口一番「お待たせしました」。と申し上げている。一時間待たせた時は「大変、待たせしました」。と言おうかな。
空いていると、「今日は休みかと思った」。と中待ちを素通りで入って来られる。院長の私はそうかねと笑っているのだが、看護婦は「さっきまで、一杯だったんですよ」。と妙に向きなって答えるのが面白い。ちょっと長めにお話ししてお引き取りを願う頃には五、六人の患者さんが連なっておいでになり、待合室が賑やかになる。人の動きには不思議な波があるらしい。
この波の動きを捉えるのは難しい。月木土がやや多いようではあるが例外も数多く、あなた任せで波に揺られて仕事をするようになって久しい。