駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

知ることは生きること

2013年12月04日 | 小考

                  

 朝の気温が5C前後まで下がると患者さんの出足が鈍る。北国の人は5C程度でとあきれられるだろう。昨日は9時台の患者数が十人で、今日は暇だなと思っていたら、十時過ぎからどっと患者さんが押し寄せ、午前中で五十人の患者さんを診察した。電車と同じで回復運転をすることになるのだが、負荷が掛かって好ましいことではない。それとなく朝早くは空いていますよと申し上げた。尤も、気温が低いのが続くと出足が回復するから一時のことなのだが。

 言葉を選んで慎重に話す石破さんや文筆業だった猪瀬さんよりも、立て板に水の安倍首相の方が失言(本音をうっかり漏らす)が少ない。一枚も二枚も役者が上なのだろう。しっかり、きちんと、できるだけなどという響きが良く言質を与えない言葉を巧みに織り交ぜて淀みなく話す。それに優れた役者なだけでなく、調教師の才もあるようで、景気回復という人参で国民を右カーブへ誘導している。間違いなく、石破さんや猪瀬さんよりも有能なブレインを抱えているのだろうと思う。

 感心してばかりはいられない。景気回復ムードが漂っていても抹消下方には暖かさが伝わっていない。「大企業だけでしょ」と患者さん達はにべもない。来年以降は無理が祟って陰りが出ると懸念している(先行きに関しては経済学者によって意見はバラバラ)が、二十一世紀型大本営発表が可能になる特定秘密保護法によって、陰りや副作用に煙幕が張られては敵わない。自由闊達に生きたいと願う者には不都合な情報も欠かせない。知ることによって自分の命を生きることができると、長く患者さんを診ていて学んだ。

  

 

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