駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

患者と病気を繋ぐアフォリズム

2013年12月29日 | 診療

                

 岩田健太郎という人が居る。人と言うと失礼だと怒るかも知れない。個人的にすれ違の経験があったので、こうした書き出しになった。十年以上前だったと思うが、氏の研修医向けの感染症の講義に出させて貰い、私は治療戦略の変遷に付いて質問したのだが、「えーっとその質問はまたに」。とか言って「はい、若い人に質問は」。と無視されてしまった。

 今は神戸大学の感染症治療学の教授である。講義を聞いて著書を一冊解説をいくつか読んだだけで、口幅ったいかもしれないが講釈のともったいの多い先生である。一ページで書けることを三ぺーじも四ページも掛けて書かれる。

 勿論、それにはそれなりの理由があってのことと思うのだが、小医は病を治し中医は人を治し・・とか芭蕉の言葉とかが出てくるのには過ぎている感じがする。

 講釈やもったいが多くなる理由は感染症治療の勘違いに対抗したい、臨床教育に力を入れたいという強い思いがあるうえに教え好きだからなのだろうと推測する。 

 私は半世紀近い昔に医学教育を受けたのでよく分かるのだが、昔は患者と病気を別個に扱う所があった思う。半世紀を掛けて改善されてきてはいるが、まだどこかに臨床を大切にして深めようとする姿勢が不十分なところがある。感染症では特に抗生剤メーカーの宣伝攻勢の名残りがあるので、岩田先生は多分もっときちんと考えて感染症を見て欲しいという強い思いがあり、アフォリズムが登場するのだろう。

 

コメント
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