駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

同病同感、痒いのは困る

2013年12月14日 | 診療

                    

 「大変ですねえ」。

 「もう少しだから」。

 と言っても、医師や看護師が患者の訴えにどの程度共感を持っているかで、得られる信頼や慰めの効果は違ってくる。残念ながら経験のないことには想像をたくましくしても共感に限界があるので、空々しく響くこともあるかもしれない。

 それに喉元過ぎれば熱さ忘れるで、苦しさ辛さは遠ざかれば、色々修飾されてしまう。親子になれば何だそれぐらいと、遠い昔の自分の頑張りを針小棒大に子を叱りつけたりすることになる。

 しかし、今経験していることには深い共感を持って対処できる。寒くなって空気が乾燥してくると私のような乾燥肌の人間はあちこちが痒くなる。何事に依らず亭主に厳しい女房は痒さ知らずなので、私が注文したすき焼き丼が出てくる間、ぼりぼり脹脛を掻いていると、「みっともないからやめなさい」。と睨みつける。

 そこへ行くと私は爺さん婆さんの「寒くなるとあちこち痒くて」という訴えに深い共感を持って、これを塗って御覧なさいと皮膚保湿剤を処方してあげることができる。中には図々しい婆さんも居て、この前のあれよく効いたから、今日は五本頂戴などという。そうは出せないから三本で我慢してくださいと三本にしてもらう。よく効いても、爺さんに分けてもらってはまずいのだ。

コメント
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