駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

「量子革命」を読む

2013年12月22日 | 

                 

 訳者の青木薫さんが後書きで書いておられるようにマンジット・クマールによる「量子革命」は素晴らしい本で、最近読んだ本の中では一番面白かった。今年もあと10日間、今年読んだ一番の本になると思う。優れた解説書があれば量子力学の歴史と意味(哲学的な側面)を理解することは私のような一般人にもできる。マンジットクマールの本はそれに成功した嚆矢と言える本で、まるで記録映画を見るように、二十世紀初頭に生まれた量子という概念がどのように発展して行ったかを教えてくれる。

 共同研究を先導したボーアだけでなく、孤立しても独りで思索することを好んだアインシュタインでさえ数多くの私信を数多い同時代の研究者と取り交わしている。其処に一般人にも良く理解出来る感情の吐露があり、人間の息吹の中で理論が深められていったのが伝わってくる。

 そして、誰にも起こりうるいくつかの個人的な悲劇と悪意に満ちた戦争の爪痕を知った。マックスプランクに起きた不幸を知り、暗澹たる気持ちになった。

 量子論を読んでの感想にしては奇妙かも知れないが、虚心坦懐に感じ考え続けることの大切さを教えられたと思う。

 虚心坦懐に考えられる環境を守るのはジャーナリストの使命だと付け加えたい。

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