駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

農家の造り

2013年12月05日 | 診療

                

 当院は駅前と言っても周辺には半農半サラの家が結構ある。盆暮れには農作物の差し入れも多い。

 今週始めに、爺さん婆さん農家へ往診に行った。Sさんが遂に歩けなくなったのだ。初めてなので聞いた通りにバス停の三軒先ということで探し当てたのだが、いざ上がろうとして、あれこれはKさんの家ではないかと錯覚を起こしそうになった。家の造りが同じで玄関は東南で広い三和土になっており、南に面して広い座敷がある。北東に食堂と台所がある様子で、間取りが似ているというか同じなのだ。

 築どれくらいだろうか、四五十年は経っていそうだ。昔は設計なんてなかったのだろう。大工が頭に染み込んでいる通りに建てていった感じがする。大抵は庭に面した仏壇のある一等部屋に寝ていることが多いのだが、Sさんは建て増したと思われる狭い廊下を伝った奥の西日の当る四畳半に寝ていた。

 開口一番「先生、もう終わりだよ」。と大声ではっきり言う。「いやいや」。と言いながら、一通り痩せ細った身体を診察し、点滴をしてあげることにした。その頃には針を刺しても痛いとも言わず、うつらうつらしていた。神妙な嫁さん?と従順な感じのお婆さんに、今後のことをお話して次の患家へ向かったのだが、行きすがら「年内だろうなあ」。と看護師と話をしたことだ。

コメント
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