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『ハプスブルク帝国期ハンガリーにおけるマイノリティ起業家たち』by 大東文化大学教授 高田茂臣氏

2021年11月30日 | トリエステ・オーストリア・ハンガリー帝国

トリエステ-3(Il Piccoroの設立者とトリエステのユダヤ人) - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

とその前の記事、

トリエステ~ドナウシュバーベン~ドナウ連邦構想 - Various Topics 2 (goo.ne.jp)

について調べているときに見つけたもの。

ハプスブルク帝国期ハンガリーにおけるマイノリティ起業家たち
大東文化大学教授 高田茂臣氏
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抜粋1:

おそらくハンガリー的気質と言えるのだろうが,ハンガリー人には昔から商業や金融業を見下す傾向があり,この傾向は長い間消えることがなかった。このため 19 世紀前半には,ブダとペスト(ペシュト:引用者)の金融業,製造業に携わる人々,裕福な商人や職人は,そのほとんどが非マジャル系の人々で占められていた。

抜粋2:

ハプスブルク帝国東半部(ハンガリー)のマジョリティは主にカトリック教徒であるマジャル人貴族層で,彼らは政官界を牛耳っていた。
 他方,ハンガリー経済近代化の主要な担い手はマジャル人ではなく,社会の限界的位置にいたアウトサイダー出身のマイノリティであった。
経済界ではマジョリティだった彼らは,それぞれのネットワークに支えられながら事業を拡大していった。閨閥は原則として同一民族ないし出身地から形成されたが,改宗ユダヤ人と大貴族の通婚もみられた。こうして,銀行・大企業の顔として取締役会長に迎えられることも多かったマジャル人大貴族・政治家と席を並べ,上流社会の一員として迎えられたのである。
 両大戦間期までは上記人脈が連続するが,第二次大戦中のユダヤ人迫害と戦後の社会主義国有化でほとんどの子孫が西欧・北米へ亡命して上流社会全体が閉幕する。また,体制転換期の民営化に伴う旧国営大企業の衰退・消滅もあり,ハンガリー近代化を担った企業・企業家たちの系譜の多くが途絶えてしまった。

(抜粋だけでなく、全文リンクからどうぞ。)

 

この話は、「どうして欧米のユダヤ系に大企業(多くは多国籍企業)を起業した人、学者、芸術家が多いのか」の説明になると思います。

もともとお金があることもありますが、マイノリティ(ユダヤ系以外のマイノリティも。)であったからこそネットワーク、コネを持つ。

(ハンガリー出身ではありませんが、もともとお金持ちでなくても、赤狩りのときの良心のようにとらえられるウィリアム・ワイラー監督も、こんな感じ。

ウィリアム・ワイラー - Wikipedia

抜粋:

生まれたときの姓名はヴィルヘルム・ヴァイラー(Wilhelm Weiller)。当時ドイツ帝国領であったミュールハウゼンにて、小物屋を営むユダヤ系の家庭に生まれる。父親はユダヤ系スイス人、母親もユダヤ系ドイツ人で、両親共にユダヤ教徒でもあった。ヴィルヘルムは家業を継ぐことを嫌い、フランスのパリに赴いて音楽を学んだが挫折してしまう。

結局、母方の親戚(遠縁ではあるが)に当時のハリウッドの重鎮カール・レムリ(ユニバーサル・スタジオ社長)がいたことから映画の道を志し、第一次世界大戦後の1920年に18歳で渡米、まずユニヴァーサルのニューヨーク本社で雑用係として働く。なお第一次世界大戦にドイツが敗北した結果、故郷のミュールハウゼンはフランス領となった。その後、国際宣伝部を経てハリウッドに移り、オフィスの雑用係、撮影所の小道具係、配役係、助監督と着実に製作現場での経験を積んで立場を上げていく。1925年(1926年という説も)に映画監督に昇進し、短編の西部劇でデビュー。)

 

欧州のユダヤ人というと、少なくとも平均的日本人だったら、「ゲットーに閉じ込められて、自由がなく、ナチスドイツ以前にも差別、迫害されてきたかわいそうな人々」と思わされてきたと思います。が、そういうユダヤ人やユダヤ系でない、ユダヤ人、ユダヤ系がいたことを。歴史は無視する。

私は少し前にナチスドイツのことを調べてきたこともあって、「ユダヤ人」「ユダヤ系」という言葉には、トリックがあると思えるようになりました。

 

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高田教授はたまたまハンガリーの起業家だけを書かれていますが、ユダヤ人、ユダヤ系、マイノリティのネットワークのことの研究はやりづらいこともありそうです。頑張ってほしいです。

(ひょっとしたら、その国、土地を調べてたら、研究者はぶち当たるけど、資料がない、公開されていない、場合によっては「ユダヤ差別」と言われてしまうんじゃないかと思います。)

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