ベルンハルト・シュリンク(1944年ドイツ生まれ。ハイデルベルク大学、ベルリン自由大学で法律を学び、1982年以降、ボン大学などで教鞭をとる。現在フンボルト大学法学部教授)の『朗読者』(本を読んだand/or映画を観た人だけご覧ください
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%97%E8%AA%AD%E8%80%85)
を読みました。
この本の映画は『愛を読む人』という題で昨年日本でも上映されたアメリカ映画の原作です。
これは、1950年代のドイツ-15歳の少年ミヒャエルが36歳の女性ハンナと恋に落ちる(?)ところから始まる話で、映画では恋愛映画に分類されるのでしょうか(私は映画の方は観ていないので、友人の話等での印象)。
映画の方でももちろん小説と同じく、1944年生まれの作者の世代-ナチスドイツの時代に関りをもたなかった世代-から見る、間接的であれかかわりを持った親の世代を見つめる複雑な視点、というものも描かれているとは思いますし、少年の成長の過程にも軸がおかれているかと思います。
ただ、この少年が15歳から50歳になるまでの話を2時間程度の映画にまとめ上げるには、どうしても少年と女性の間の繋がりに重点を置かなければならないでしょう。
また、映画にしても小説にしても、最初から最後まで、ハンナの行動・ミヒャエルの行動に「何故そうしたの?」という疑問が沸くと思いますが、これの回答が映画と小説では大分違ってくるでしょう。
そして、小説を読んだあとは若い頃にヘッセやゲーテの文芸作品を読んだ時と同じような余韻感じられるのに対して、映画の方ではそれは期待できるとも思えません。良い映画ではあるようですが、小説を読むことをお薦めします。
本の案内:http://www.shinchosha.co.jp/book/200711/
余談ですが、この作品中、悩んでいる息子が、普段あまり子どもに関心を寄せていないだろう父親(哲学者)のところに相談に行く場面があります。
そこで、父親がする大学生の息子へのアドバイス、接し方がとても印象に残りました。父親の言葉を2つ紹介しましょう。
「でもわたしは大人たちに対しても、他人がよいと思うことを自分自身がよいと思うことより上位に置くべき理由はまったく認めないね」
「君を助けられなくて残念だとは思わない。君が問いかけた哲学者として、という意味だがね。父親としては、子どもを助けられないという体験は、ほとんど耐え難いものだよ」
(松永美穂訳)