フィナンシャルタイムズは一流紙とされながらも、傲慢、視野が狭さを隠さずに書いている記事も時々あります。そうしたなかでも、今回のこの非人間的、中傷的、狡猾な記事には強い怒りを感じました。とても『紳士の国』の新聞記事とは思えません。
彼らは、自分の国の人間が人質になって命がかかっているときに、こんな記事を掲載するのでしょうか、ね。
(人質の命がかかっているときに、自衛隊を海外に送れるようにと相談している日本政府も彼らと変わりないですが。)
JBpress (2015年1月30日)
イスラム国人質事件、日本外交の転換点か
(FT, David Pilling)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42806
人質がらみのところは、取り上げる気になりませんが、 日本の外交について描いてある部分を抜粋します。
「日本政府が長年、国際舞台で自国を中立な国として演出しようとしてきた後で、安倍氏は立場を明確にする方向へ日本を突き動かそうとしている。第2次世界大戦以降、日本は想像力豊かに「全方位外交」と名付けられたものを追求してきた。
ありていに言えば、全方位外交は、すべての人の友人であるふりをしながら、自国の経済的利益を追求することを意味した。その間、日本を防衛する危険な仕事は米国にアウトソースされた。
全方位外交にも用途はあった。例えば1973年には、日本の外交官らはオイルショックの破滅的な原油禁輸措置に直面し、日本政府をアラブ世界の友人として打ち出すことで、ヨム・キプル戦争(第4次中東戦争)でイスラエルを支持する米国と距離を置いた。すると、原油が再び日本に流れ込んだ。
今から10年前、日本政府はイランで似たようなカードを切った。日本はイラン政府に熱心に働きかけ、巨大なアザデガン油田の権益を獲得した。ただ、この時は、制裁の名の下に、米国政府によって合意を帳消しにされた。」
ここには、「日本は想像力豊かに「全方位外交型」と名付けられたものを追及してきた」と書いてありますが、日本は「全方位外交型」は実現することができず、「米英向き(いや、従属)外交型」です。
(アザデガン油田も日本は大金をつぎ込んできたのに、アメリカの一言で諦めさせられました。アメリカからは何の保障もされません。)
また、確かに日本の中東政策は「石油のために中立」という面がありましたが(田中角栄が、アメリカにイスラエル側につくように言われましたが、Noと言いました。)、それと同時に、日本には宗教関係の争いには首を突っ込む気がないし、そもそもイスラエルを積極的に応援する気もない(=英米の二枚舌外交のツケ、植民地のツケも日本はないし、石油利権のため難癖をつけて爆撃して敵をつくるようなことを日本はしてこなかった。)、という部分もあります。
小泉政権のときからこの「中立」が崩れ、今、安倍政権で完全米英イスラエル寄りになろうとしているのは、彼らに(この記者なみに)想像力が欠如しているからだと思います。
なお、 記者は、(日本が)「すべての人の友人であるふりをしながら、自国の経済的利益を追及してきた」と書いていますが、「都合の良い時だけ友人と言ったり、自分の利益にならない国を「敵」としながら、自国の経済的利益を追求してきて、尻拭いを”友人”に手伝わせる国の人間」には言われたくないです。
・・・まあ、この記事は、読者をmisleadするために、意図的に書かれたものなのかもしれませんけどね。
追記:Pilling記者(元東京支局長、現アジア編集長)は、2002(2001末?)から2008年まで日本に滞在、昨年末、本(『日本ー喪失と再起の物語』)を出版しています。