山本馬骨の くるま旅くらしノオト

「くるま旅くらしという新しい旅のスタイルを」提唱します。その思いや出来事などを綴ってみることにしました。

ひばりちゃん、どうしたの?

2020-07-11 02:00:50 | 宵宵妄話

 雲雀と書いてひばりと読みます。美空ひばりさんは誰でも知っていますが、さて、本物のヒバリ(=雲雀)のことを知っている方はどれほどおられるのでしょうか。この頃は本物を置き去りにして、何でも画像やバーチャルな世界だけのものを見て、それで知った気分になっている向きが多いので、もしかしたら本物のヒバリなど見たことも、鳴き声を聴いたこともないという方がおられるのかもしれません。

 大都会にヒバリたちが住める環境があるのかどうか。都心通いの勤め人の仕事を終えて20年以上が経ったこの頃の自分は、滅多に都心エリアに行くことがないので、その辺りの様子はさっぱり判りません。建物の背比べ競争が始まって、超高層ビルが乱立する場所では、ヒバリたちは美空ひばりという不世出の歌手に名をとどめるだけとなっているのかもしれません。

 春になると小鳥たちの鳴き声が姦しいのですが、その中でも自分が特に楽しみにしている一つがヒバリたちの囀(さえず)りなのです。田舎で育った者には、この鳥に対する郷愁を含んだ親近感があるのです。子どもの頃、田舎の麦畑が麦秋を迎える頃になると、畑の上には何羽かのヒバリたちが空高く鳴き声を響かせながら舞い上がっている景色があり、やがて彼女たちは謳い終わると突然急下降して、麦の畝の中に消えるのです。その後をそっと追いかけると、畝の中に巣が見つかることが多く、そこには何羽かの雛たちが、大きな口を開けて親の飛来を待っているのです。その雛たちが無事に育って飛び立って行くまで、観察するのが楽しみでした。その頃の田舎の子どもたちの遊びといえば、暮らしの中の自然との触れ合いの中に見出されるものが多かったのです。今日のゲームのようなバーチャルな世界などどこにも見当たらず、それは漫画本や雑誌などに掲載された絵や記事を読んでの、それぞれの描く想像の世界なのでした。

 子どもの頃に見たヒバリたちの姿は、本物そのものだったと思います。ヒバリはスズメによく似た姿をしていますが、大きな違いは頭に冠羽と呼ばれる、少し立った羽毛があり、スズメの平凡さとは違った、ちょっと気取った姿をしています。子ども心にヒバリはスズメやホオジロなどより一ランク格が上の鳥なのだと思っていました。勿論鳥にランク付けなど無用なのですが、子どもたちの遊びの中では、自然にそのような感覚が生まれてしまっていたようです。

 守谷市に住みついてから16年になりますが、守谷は東京への通勤圏として住宅等が開発された町であり、ここ40年ほどの間に人口が急増して現在は7万人に迫ろうとしており、茨城県下では最も人口密度の高い市となっています。けれども市の面積の半分以上は農耕地であり、まだまだ田舎であり、田舎と都市での暮らしがごちゃ混ぜになっている感は否めません。やがては都市化の方向へ一層進展してゆくのかと思いますが、今のところ自分にはその田舎の残っている部分が、ありがたく嬉しく思っています。

 このヒバリのこともその一つなのですが、この頃気になる変化を感じています。引越して来た当初の頃の春には、空高く上がり舞うヒバリの囀りを聴くのが嬉しくて、しばらく立ち止まってそのめちゃくちゃなトーンでの囀りを眺めて楽しんでいたのですが、この頃は囀りが聞こえるので空を見上げても、さっぱりあの浮かれ飛ぶ姿が見えないのです。老人になって視力が低下しているので、そのせいなのかと眼を凝らして見ても一向にその姿を見つけることができません。それで、気がついたのです。なんだ、連中空に上がっていないんだ、と。地面の草むらの中で囀っているのです。道理で近くで大きく聞こえるではありませんか。これは何なんだと思いました。偶々1羽だけの囀り現象であれば、間々そのようなこともあろうかと納得するのですが、注意して見ていると圧倒的に空に上がっているのが少ないのです。これは明らかに異常だなと思いました。

 どうして空に上がらないで囀っているのか? その理由はヒバリたちに訊いてみないと解らないと思うのですが、自分の勝手な推測では、もしかしたら、彼らはこれも人間どもの所為なのだと言いたいのではないか、と。空に上ってみても空気は不味いし、探している餌もさっぱりで、このような無駄なことをして浮かれているよりは、地上の草むらの方が未だましだ。という人間と同じ効率主義に切り替えたのではないか。やだね~、と思いました。

 空に上がらないヒバリは、もはや雲雀でも告天子でも天雀でも叫天子でもなく、只の地鳴き囀るスズメと同じような存在になってしまうのではないか。そう思うとがっかりです。しかし、その原因がもし人間の振る舞いにあるとしたら、これはもう明らかに環境問題だなと思いました。環境汚染のバロメーターは至る処に点在しており、このヒバリたちの振舞いもその一つかと思うと、その空に上がらない横着を責め詰(なじ)ることはできないなと思いました。でも、やはり天高く囀り舞って欲しいと願わずには居られません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする