2012/10/16 OnAir - 2nd. Week - カントリーロック特集 萩原健太氏を迎えて 2
01.The Rolling Stones:Dead Flowers
02.Elvis Costello & The Attractions:I'm Your Toy
03.Donald Fagen:I'm Not the Same Without You
04.はっぴいえんど:空いろのくれよん
05.佐野元春 and The Hobo King Band:ロックンロール・ハート
06.Wilco:Far, Far Away
07.Whiskeytown:Excuse Me While I Break My Own Heart Tonight
08.Yo-Yo Ma, Stuart Duncan, Edgar Meyer & Chris Thile:Attaboy
09.Mumford & Sons:I Will Wait
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■内容の一部を抜粋
・カントリーロック特集 萩原健太氏を迎えて 2
先週に引き続いて音楽評論家の萩原健太氏を迎えての「カントリーロック特集」。
・Dead Flowers
1971年のローリング・ストーンズのアルバム『Sticky Fingers』からの曲で「Dead Flowers」。メンバーの中のキース・リチャーズがグラム・パーソンズとひじょうに仲が良かった。ふたりで古いカントリーの曲を歌って楽しんでいたらしく、そういうようなノリがストーンズにも伝染した。イギリス人の目をもって独自のアプローチを仕掛けて、それがまたアメリカにも影響を与えて新しいカントリー・ミュージックが生まれはじめた。
・I'm Your Toy
ストーンズ以外にイギリスでカントリーロック的なサウンドを作っていたのがエルヴィス・コステロ。1980年代に入り1981年に全編カントリー、カントリーロックのアルバム『Almost Blue』を作った。グラム・パーソンズのフライング・ブリトー・ブラザーズがやってた「Hot Burrito #1」に付いてた副題でカヴァーしたのが「I'm Your Toy」。これでもう一度グラム・パーソンズにスポットを当てた。
・3PICKS!
「Motoharu Radio Show」では毎月番組推薦盤3枚のCDをピックアップしている。今月10月の「3PICKS!」はデイブ・マシューズ・バンド『Away From The World』、エイミー・マン『Charmer』、そしてドナルド・フェイゲン『Sunken Condos』。どのレコードも心に響くよいソングライティングと素晴らしいサウンドがあると元春。この中から今週はドナルド・フェイゲン『Sunken Condos』。
・ドナルド・フェイゲン
米国、ニュージャージー州出身のミュージシャン、ソングライターで、1948年生まれ、現在64歳。バンド、スティーリー・ダンのメンバー。パートナーのウォルター・ベッカーと一緒にこれまでとてもユニークで洗練されたサウンドを作ってきた。スティーリー・ダンのサウンド、ブルース、ジャズをベースにしたとても知的で現代的なサウンド。そしてよく言われるのがそのサウンドの緻密さ。ドナルド・フェイゲン、ウォルター・ベッカー、ふたりともミュージシャンとして相当な完璧主義者ということ。これまで出してきたレコードはどれも文句のつけようがない完成度がある。スティーリー・ダンのレコード、ソングライティング、演奏、アレンジ、そしてレコーディングの技術、それらがとても高いレベルで合わさって総合的な音楽アートになっている。そのスティーリー・ダンのメンバーのひとり、ドナルド・フェイゲン。つい最近ソロ・アルバムを出した。ソロとしては4枚目に当たる。スティーリー・ダンのときもそうだが、ドナルド・フェイゲンはキーボードを弾きながらヴォーカルを取っている。このアルバムでもスティーリー・ダンのレコードと同じように独特のブルージィーで落ち着いたサウンドが聴ける。そしてドナルド・フェイゲンは近々来日コンサートもある。単独ではなくジョイント・コンサートでマイケル・マクドナルド、ボズ・スキャッグス、そしてドナルド・フェイゲンという三人。正にアダルト・オリエンテッド音楽の代表的なミュージシャンたち。名古屋、大阪、東京でコンサートがある。ドナルド・フェイゲンの新しいアルバム『Sunken Condos』から「I'm Not the Same Without You」。
・空いろのくれよん
日本ではポップミュージックの原点として取り上げられるはっぴいえんどが、多分にバッファロー・スプリングフィールドを意識していたところもあって、バッファロー・スプリングフィールドが持っていたいろんな音楽性のうちのひとつであるカントリーロックみたいなものも受け継いでいる。1971年のセカンド・アルバム『風街ろまん』の「空いろのくれよん」では大滝詠一さんがヨーデルを披露している。アルバムのクレジットには「イエロー・ヨーデル」と明記されていて、これはカントリー・ミュージックの礎を作ったジミー・ロジャースがヨーデルを得意としていて寂しげなヨーデルということで「ブルー・ヨーデル」と呼ばれていた。それに対して大滝さんは日本人だからということで自ら「イエロー・ヨーデル」と呼んでいた。
・ロックンロール・ハート
1997年には元春はホーボーキングバンドと渡米してウッドストックでジョン・サイモンのプロデュースのもとで『The Barn』というアルバムをレコーディングした。このアルバムは元春のキャリアの中で最もカントリーロックに接近したアルバムだった。バンドのDr.kyOn、佐橋佳幸をはじめとしたメンバーはアーリー70'sの米国音楽に多感な頃に触れてきてたこともあって、その聖地といっていいウッドストックに行ってクリエイトしようということで、楽器を全部持ってアンプなども空輸してレコーディングした。
「ロックンロール・ハート」、途中のブルース・ハープはジョン・セバスチャン。このセッションのエピソードとしてジョン・セバスチャンは声がだいぶ変わったこともあり、歌うことに積極的ではなかった。でもジョン・セバスチャンはジョン・サイモンに「ロックンロール・ハート」のリフがすごく好きなので一緒に歌いたいと言ったそうだ。ジョン・サイモンは感激してジョン・セバスチャンに「じゃあ、やってみるかい?」と言ったという。ジョン・セバスチャンはすごくナイーヴな性格だったけれどマイクロフォンの前に立って静かに歌い出したそうだ。バンドもスタッフもみんな感動したという。
Dr.kyOnはセッションに参加したガース・ハドソンにザ・バンドの初期のピアノ・プレーについてどういうふうに弾いたのかを訊いていたそうだ。ガース・ハドソンはバッハの譜面を出してきて左手のベースの対旋律はバッハからヒントを得たと話していたという。ふたりの姿を後ろから見ていた元春はまるで親子のように会話していたので涙が出たそうだ。
・Far, Far Away
'90年代にはカントリーロックはオルタナティブ・カントリーという新しいジャンルを生み出した。'80年代というなんかちょっと特殊な時代を経て、デジタルからアナログに戻ってゆくことになる。'80年代の終りにトラヴェリング・ウィルベリーズのように生ギターを中心にグルーヴを作るグループが出てきて、昔ながらのカントリーロックとはちょっと違う、ロック的な視点で再構築したオルタナティブ・カントリーと呼ばれる動きが出てきた。健太さんが当時注目していたのはアンクル・ティペロというグループ。このグループにはジェフ・トゥイーディとジェイ・ファーラーのふたりの男がいて、このふたりはやがてそれぞれ別のバンドをやるようになって、ひとりはサン・ヴォルト、ひとりはウィルコというバンドを結成した。このバンドは途中シカゴの音響系のサウンドをやったりしながらも、現在はバンド全体で一人のシンガー・ソングライター的な感じでブリティッシュの影響も取り入れるようなバンドになっている。でも最初の頃はオルタナティブ・カントリーと呼ばれる音楽をやっていて当時は刺激を受けたそうだ。1996年のセカンド・アルバムから「Far, Far Away」。この曲は現在のジェフ・トゥイーディに近いニュアンスを感じさせる。
・Excuse Me While I Break My Own Heart Tonight
もうひとり健太さんがオルタナティブ・カントリーと呼ばれる音楽で刺激を受けたのはライアン・アダムス。ニール・ヤングばりの繊細な詩を書くソングライターと言われている。彼がソロとしてデビューする前にやっていたのがウィスキー・タウンというバンド。1997年のアルバムから「Excuse Me While I Break My Own Heart Tonight」。
・Attaboy
カントリー・ミュージックの流れの中でブルーグラスは現在もいろんな音楽と合流している。最近はクラシックの中で面白い動きがある。エドガー・マイヤーというコントラバスのミュージシャンがいて、もともとはブルーグラス出身だが今はクラシックで活躍している。彼がチェロのヨー・ヨー・マと組んでアパラチア系のカントリー・ミュージックを今の時代に再現するプロジェクトをやっている。その最新のものが昨年の暮に出た。スチュワート・ダンカンのフィドル、マンドリンやバンジョーのクリス・シーリーを加えた「Attaboy」。
・I Will Wait
最近はフリー・フォークの流れの中で新しい世代が新しい表現をやっている。カントリーロックの進行形でいちばん新しいのはイギリスのマムフォード&サンズ。今年の2月にはグラミー賞でディランと共演したことでも知られている。マーカス・マムフォードというギタリストが中心になってバンジョー、ベース、キーボードという編成でドラムがいない。マーカス・マムフォードが右足でベース・ドラムを叩いて左足でタンバリンを演奏するというジャグ・バンド的なニュアンスを取り入れながら物凄いグルーヴを作っている。新しいアルバムから「I Will Wait」。
・番組ウェブサイト
「番組ではウェブサイトを用意しています。是非ご覧になって曲のリクエスト、番組へのメッセージを送ってください。待ってます」と元春。
http://www.moto.co.jp/MRS/
・次回放送
エクストラ・ウィーク。10月23日火曜日午後11時から。
コメントありがとうございます。
返信遅くなりました。
大阪公演の情報、出ませんね。。