Sunday Song Book #1505

2021年08月15日 | Sunday Song Book

2021年08月15日プレイリスト「『アルチザン』30th記念リマスター盤 特集」
1. アトムの子 / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
2. ターナーの汽罐車 / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤8月18日発売
3. 片想い / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
4. NEW YORK'S A LONELY TOWN / THE TRADEWINDS '65
5. TOKYO'S A LONELY TOWN / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
6. 飛遊人 / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
7. SPLENDOR / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
8. MIGHTY SMILE / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
9. "QUEEN OF HYPE" BLUES / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
10. モーニング・シャイン / 山下達郎 "アルチザン" 30th記念リマスター盤 8月18日発売
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■内容の一部を抜粋
番組の冒頭に
山下達郎です。本日放送のサンデー・ソングブックは少々前倒しで録っとりまして水害に対するコメントができておりませんことをあらかじめご了承ください。被災されたみなさまに心よりお見舞い申しあげます。

・近況
相変わらずスタジオ仕事の日々だそうだ。10年ぶりなので、いろいろと変化があって、トラック・メイキングに苦労しているとか。

・『アルチザン』30th記念リマスター盤 特集
今週は8月18日に発売になる1991年に発表した10枚目のオリジナル・アルバム『ARTISAN』の30th Anniversary Editionの特集。30周年記念でボーナス・トラック付き、ライナー・ノーツを書き下ろしたヴァージョンとのこと。達郎さん自身気に入ったアルバムで思い入れが強いという。

・アトムの子
この番組がはじまったのは1992年で『ARTISAN』の直後。今でもオープニングとエンディングは『ARTISAN』からの曲になっている。
"ARTISAN"は「職人」のこと。当時、1980年代の終わり頃からミュージシャンのことをアーティストと呼ぶような風潮が出てきた。元々は芸術家というニュアンスだが、ミュージシャン自身がアーティストというのに抵抗があったとか。そうした文化人志向が嫌で、「敵がアーティストならこっちはアルチザンだ」ということで思いついたという。寡黙な技術者たちへの尊敬の意味も込めて『ARTISAN』というタイトルにしたそうだ。
1曲目の「アトムの子」は1989年に手塚治虫さんが亡くなり、それから手塚治虫作品を読み直す中で、自分の幼少の記憶と密接に結びついてきて、そこから「われわれはアトムの子」というイメージが浮かび、そこから曲を作りたくなり、アルバムの締め切りの十日ほど前に突貫工事で製作したという。「やればできるじゃないか」と言われたとか。

2曲目は1991年にシングルとして発売された「さよなら夏の日」。夏の終わりのイメージとジュブナイル、自分の青春の終わりをオーバーラップした曲。夏の終わりに番組でオンエアするので今日はB.G.M.で。『ARTISAN』の大きな特徴はほとんど一人きりで作ったアルバムだということ。広義な意味ではいわゆるテクノのアルバムで、自分で打ち込んで、シンセサイザーの音色も全て自分で作って、一人きりでトラックを作っている。ギター・ソロが何曲かあるが、全て自分で弾いているという前代未聞のアルバム。そういう意味では個人的な、パーソナルな色合いが濃く出たアルバムで、「アトムの子」にしろ「さよなら夏の日」にしろ、歌詞はひじょうに個人的な思い入れが強く出ている。なので自分では気に入ってる一作。

・ターナーの汽罐車
3曲目の「ターナーの汽罐車」も一人で作ってる曲。バブル経済の直後に作ってるアルバムなので、80年代のバブルの頃のわさわさした感じに対する抵抗感が曲調によく出ていると自分で思っているそうだ。青山に外タレのライヴをやっていたカフェバーというかパブがあって、ドラマティックスを見に行ったとき、終演後に友人と飲んでいて、トイレに行きたくなり、店内の奥まった廊下に出たら、そこに女の子がうずくまって泣いていた。バブルの頃なのでワンレン、ボディコンの女の子ですごく寂しそうな佇まい。それが印象に残っていて、それで閃いたのが「ターナーの汽罐車」という曲。そういうような場所で男女の倦怠というか、そういうものを歌った曲。それの小道具で登場するのがイギリスの風景画家でジョセフ・ターナーの代表作の『雨、蒸気、速力』。ひじょうに朦朧とした絵だけど好きな絵なので、それを小道具に持ってきて作ったという。最初、ドラムとベースと普通のリズム・セクションで録ったが、全然耽美的な感じが出ないので、ドラムマシーンとシンセベースとアコースティック・ギターのいわゆるコンピューター・ミュージックとして仕上げた。ピアノのソロだけは難波弘之さんに頼んだとか。
曲をかけ終えて。
ライヴでフル・メンバーで演奏したことがほとんどなく、最近は3人ライヴでよくやっている。一曲目にやっているそうだ。

・片想い
4曲目は「片想い」。この番組では5月になったらよくかけている。一人で作っているアルバムなので、コンピューター・ミュージックとしてどう構築するか考えて作った曲。色合いが自分では気に入ってる曲で、若いときに女の子になかなか告白できない、そういうもどかしさみたいなものの思い出を、35,6のときに引っ張り出して作った曲。

このアルバムには2曲カヴァー作品が入っていて、この頃は竹内まりやさんのアルバムと並行して、毎年、山下達郎、竹内まりや、と順番にアルバムを作っていた。曲数が揃わず大変なので、そういうときはカヴァー作品に助けられてもらっていた。

・NEW YORK'S A LONELY TOWN
トレードウィンズの1965年のヒット「NEW YORK'S A LONELY TOWN」。ピート・アンダースとヴィンセント・ポンシアのソングライター・コンビが作ったサーフィン・ホットロッドのスプンオフというかもじり。ニューヨークにはサーフィンがない寂しい街だという歌。その曲をイギリスのデイヴ・エドモンズが「LONDON'S A LONELY TOWN」という替え歌にした。それを達郎さんと萩原健太さんがお茶を飲んでるときに、「じゃあ、TOKYO'S A LONELY TOWNがあってもいいじゃないか」という話になり、それを作ったらどうだ、とそそのかされて作ったそうだ。

・TOKYO'S A LONELY TOWN
『ARTISAN』というアルバムは初めてのCDオンリーのアルバムで、アナログ盤が当時でなかった。アナログがCDに凌駕された時代。なので今回初めてアナログ盤を作った。2枚組の180グラム重量盤で音質重視のいつもの仕様。特にウォール・オブ・サウンド風の「TOKYO'S A LONELY TOWN」はアナログのメディアで聴くと、また違ったテイストで聴こえるという。

・飛遊人
初CDのアルバム、でもアナログのテイストを残したくて、6曲目に入れたのが短い曲「飛遊人(ヒューマン)」。ANAのCMに使った曲にイントロを付けた。この曲はアナログのA面とB面の転換のイメージで作ったそうだ。

・納涼夫婦放談
8月22日、29日は竹内まりやさんをゲストに迎えて毎年恒例の「納涼夫婦放談」。今年後半のスケジュールをいろいろと報告する予定。

・山下達郎シアター・ライヴ PERFORMANCE 1984-2012
今年はツアーができないので、他に何かできることはないかといろいろ考えて、2012年に映画館で公開された「山下達郎シアター・ライヴ PERFORMANCE 1984-2012」の素材を使って、9月3日から配信ロードショーが決定した。映画館と同じ仕様にしたいので期間限定の配信。いつものように配信プラットホームはMUSIC/SLASH。チケットの販売開始は本日15日の午後3時から。チケット料金はシアター・ライヴの劇場料金と同じ2500円。9月3日から9月12日までの10日間。平日は1回のみの配信で土曜日は3回、日曜日は2回。全16回の配信。詳しいスケジュールは山下達郎オフィシャルサイトにて。
https://www.tatsuro.co.jp

MUSIC/SLASHのスペシャル・サイト
https://special.musicslash.jp/tatsuro-theaterlive/

・『ARTISAN』30th Anniversary Edition
1991年のアルバム『ARTISAN』の2021年の最新リマスタリング、30th Anniversary Editionが今週8月18日に発売。同時にアナログ・レコードも発売。CDかアナログ盤のどちらか初回プレスのご購入者の中から抽選で、200名に7インチ・シングル盤をプレゼント。A面「さよなら夏の日」、B面「エンドレス・ゲーム」。当時のシングル・カットの2曲で、今回のために新しく製作されたもの。ワーナーが考えた先着プレゼント(ポストカード)は実施してない店舗やウェブサイトがあるのでご注意くださいとのこと。詳しくは山下達郎オフィシャル・サイトにて。
https://www.tatsuro.co.jp

・SPLENDOR
アルバム『ARTISAN』の中で一曲だけリズム・セクションと録音したのが精神的B面の1曲目、7曲目に収録されている「SPLENDOR」。小さな頃に星を見るのが好きだったので、田舎に行って星空を眺めていると、星が降ってくるような感じがした。そのイメージで書いたSFチックな一曲。
曲をかけ終えて。
達郎さんの作品の中で異色の一曲。『ARTISAN』が出たときのツアーで一度だけライヴで演奏したことがあるそうだ。またやりたいんだけど、最近曲の頭数が多いのでライヴでなかなかやることができないとか。「次のツアーでやろうかなと思ってますがわかりません。これ言うとまたいろいろ言われる」と達郎さん。

・MIGHTY SMILE
8曲目の「MIGHTY SMILE」はいわゆるモータウン・ビート。これも普通にリズム・セクションでレコーディングしてみたが、この時代だと使い古された感じがあったので、コンピューターで仕上げると、何とんなく普遍的なもの、そう言う感じになり、自分でも気に入ってるものになったという。

・ "QUEEN OF HYPE" BLUES
この時代に使いはじめたローランドのD-110という音源モジュールが優れもので、このアルバムはそれをフルに使って、一人で打ち込んで作っている。その典型は「片想い」と9曲目に入っている「 "QUEEN OF HYPE" BLUES」。いわゆるファンクもので、ほとんどD-110一台で構築しているとか。バブルの雰囲気が達郎さんは全然ダメで、特に、きつい、汚い、危険の「3K」、そういうようなキャッチフレーズのいい加減さとか、表面的なヤラセ、オーバー・プロモーションや誇大広告に、どうしても馴染めなくて、その空気を反映した一作。
曲をかけ終えて。
達郎さん自身は気に入ってるが、ときどきこういうのやると「こういうの嫌い」とか言われる。アルバム『FOR YOU』に入ってる「HEY REPORTER!」も同じ感じ。

10曲目の「ENDLESS GAME」は先週かけたので今日はオンエアしない。リスナーから先週の「ENDLESS GAME」はデジタル・プロセッシングしたのか質問があったが、今回発売されるCDのソースをそのままかけたとか。また先週の「ENDLESS GAME」には今まで聴こえなかった音が入ってたというリスナーもいたが、もとの「ENDLESS GAME」から『OPUS』に至るまで全て同じ音源で同じマスターを使ってるそうだ。リマスターが若干違ってるだけ。イントロの残響についてもリスナーから質問があったけれど、「いつものリバーヴです。全く同じです。リバーヴも使い方でいろいろあるんです」と達郎さん。

・モーニング・シャイン
駆け足の放送で時間内に11曲全部かけられなかった。最後の11曲目の「GROOVIN'」はこの番組のエンディング・テーマなので割愛。でもこの番組とアルバム『ARTISAN』がこんなに密接だとは思ってもみなかったという。「それではみなさん、よろしくお願いします」では締まりがないので、最後は時間までボーナス・トラックの「モーニング・シャイン」。

■リクエスト・お便りの宛て先:
ハガキ
〒102-8080 東京FM
「山下達郎サンデー・ソングブック」係
メール
https://www.tfm.co.jp/ssb/

2021年08月22日・29日は、「納涼夫婦放談(ゲスト:竹内まりや)」
http://www.tatsuro.co.jp
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