Life in America ~JAPAN編

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何が8つ子を作り出したのか? ~その1

2009-02-14 06:34:25 | アメリカ生活雑感
先日、カリフォルニアで8つ子が誕生し話題になった。
最初の報道からしばらく経つにつれてこれに関するさまざまな新事実が明らかになり、今アメリカではこの8つ子をめぐって論争が沸き起こっている。

8つ子を産んだのは、33歳のナディア・スールマン。
1996年に結婚をしたが夫婦には子どもはなく、2000年に別居。2008年に正式に離婚が成立している。
夫と事実上別れた2001年に“友人”の精子提供を受けて第1子を出産、そののちも同じ提供者からの精子で次々に計6人の子どもを産んでいる。
そのすべてがIVF、いわゆる体外受精(試験管ベイビー)による出産だった。

8つ子が大論争となっている一番の理由は、彼女がすでに8歳を筆頭に6人の子持ちであったことに加えて仕事をしていない(定収入のない)シングルマザーであること。
そんな状態で、さらに夫婦でもない精子提供者との間で子どもを産み続けようとした「無責任さ」だった。
ふたつ目は、担当した医師が不妊治療で決められているガイドラインを超えた6つのembryo(胚芽)を母親の子宮に戻した、というルール違反。
結果的に6つの胚芽のうちの2つがさらに分割して合計8つの命が宿ることになったが、これは母子ともにきわめて危険な状況を引き起こすとして堅く禁じられている。
3つめは(これは8つ子には全く関係のないことだが)、彼女がかつて「アンジェリーナ・ジョリーのような」顔に美容整形をしたというウワサ。本人は否定しているが、明らかに2年前とは顔が変わっている。同じく6人の子持ちであるアンジェに、見た目も近づこうとしたのか?


次第に全貌が明らかになっていくにつれ、私の中にはあるふたつの疑問が沸いていた。

何が彼女をここまでさせたのか?
資金的なバックアップはどうしていたのか?

それに触れた興味深い記事を発見した。

◆◆
彼女は1997年から2008年まで、カリフォルニアのメトロポリタン州立病院で精神科助手として働いていたが、あるとき患者の介護中に他の患者からどつかれて腰をひどく痛めた。
第1子妊娠中の2001年、車の事故で以前痛めた腰をさらに悪くし一時は身体不自由状態にまでなった。その怪我がもとで彼女は病院勤務を辞め、その後軽いうつ病に悩まされるようになる。
彼女は病院での事故が原因として病院に賠償を求め、結果として2002年から2008年までの毎年、病院から167,000ドル(当時の平均レートで約2000万円)の賠償金を受け取っていた。
また、先に産んでいた6人のうち3人は身体障害児であり、月々490ドル(約5万円)の給付を受けている。

ある精神カウンセラーが彼女をこう分析する。
「さびしい幼少期を送ったことが、まず多くの子どもが欲しいという気持ちの発端にあるようです。事故の後遺症によるうつ病に悩まされており、子どもを産むたびにそれから解放され、また次々に子どもを産むことによって気持ちを晴らしていたということでしょう」
またナディア自身も「妊娠による、抑えようのない不安や歓喜といった感情の高ぶりからうつ病にも悩まされていた。出産によって子どもを持つという夢がかない達成感を得ていた。3回流産した経験もあり、そのたびにもう一度妊娠しなければと自分を駆り立てていた」と語っている。
彼女の母親もあるインタビューにこう答えている。
「娘は10代のときから取りつかれたように子どもを欲しがっていたわ」



寂しさを紛らわすために、夫婦の子でもない子どもを次から次へと産み落とす女の狂気。

しかし、本当の問題はもっと深いところにある気がしてならない。


(・・・つづく)

*参照記事:
http://abcnews.go.com/TheLaw/story?id=6806753&page=1