Top 10 Bush Moments (By デヴィッド・レターマンショー)
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大統領選挙から1週間。
今となってはなんだか遠い昔のことのように感じる。
先週は季節はずれの暖かさだったのが、今週は一転して0℃前後の真冬の冷え込み。今日は雪交じりの氷雨が降っている。
これが先週だったら、12万人はグラントパークで凍死寸前だっただろう。
歴史のお膳立てはこうやって作られるのか、と改めて感動する。
今は誰もがブッシュの存在など忘れ、オバマ新大統領とどうこの難関を乗り切っていくかで頭が一杯。
夕べのレターマン・ショー(ナイト・トークショー)で、レターマンが「ブッシュ大統領もあと100日」と言うと、観客からもやんやの喝采がわいていた。
これだけ不人気な大統領も珍しいものだ。
アメリカだなぁ、と思わず笑ってしまう変わり身の早さはまだある。
“大統領になるかもしれなかった”マケインは、負けてしまえばタダの人。四方を固めていたシークレットサービスも敗北の瞬間からお役御免となり、翌日はマケイン氏自らバンを運転して自宅に帰っていた。
負けた瞬間にまるで魔法が解けたように、素直なじいさんになったマケイン。敗北宣言を評してレターマンは「もっと早くにこう(誠実に)なっときゃよかったのに」。
かたやオバマ氏は大切な次期大統領。2重3重にボディガードが取り囲み、もうトイレにも一人で行けない。娘の学校の送り迎えもガードつきだ。
シカゴの自宅の周辺、ハイドパーク近くの閑静な住宅街には特別なバリケードが設けられ、郵便配達人もルートが変わった、とぼやいていた。
ところで、先週の日曜日のこと。
私たちは友人のバーバラ(ポーランド出身・アーティスト)が出品しているというアートクラフト展をふらりと見に行った。
彼女は一女三男の4人の子どもを持つビッグママ。信心深く物腰の柔らかな、どこにでもいる普通の奥さん。
選挙前だと挨拶の常套句は「投票すませた?」だったが、今はもちろん、結果について聞くところだ。
でも、周りはオバマ支持者だけではないのでPちゃんが慎重に言葉を選んで話しかける。
「11月4日はどう過ごされましたか?」
ニコニコする私たちとは対照的にバーバラの顔がみるみると曇っていく。
「Oh my God... あの日は負けたショックで呆然としていたわ。これからどうなるのかしらと絶望的で、家族で神にお祈りをささげていたのよ」
(・・・まじかよ)ショックによる沈黙がしばし私たちの間を流れる。
気を取り直して私が言う。
「でも、子どもたちの未来にとってはいいと思うよ!」
「さぁ、どうだか。(ポーランドの)親戚がこんな冗談を言うのよ。アメリカがコミュニズムになるんだったらいっそのこと国に帰ってきたらいいじゃないってね」
「いやいや、オバマはソーシャリスト(社会主義者)なんかじゃじゃないよ」
Pちゃんが聞き捨てならん、と否定するもバーバラは聞いちゃいない。
「とにかく、様子をみるしかないわね。この先は・・・神のみぞ知る、よ」
あとからバーバラはマケイン派だったんだ、とびっくりしてPちゃんに言うと、彼は「なんとなく察しはついていたからあんな聞き方をしたんだ」と言う。
ポーランド人はヨーロッパの国の中でも、特に信仰深くコンサバ(保守的)として有名らしい。アメリカに移住したポーランド人が保守派=共和党派であることは、言わずと知れるというのだ。
そんな予想などできるはずもない私は、「ごく身近の友人が共和党派」だったという事実に結構頭をどつかれたようなショックを受けていた。
注目すべきは彼女の言葉。この短い会話の中に、マケイン(共和党)支持者たちを象徴するキーワードがふたつ含まれている。
それのひとつが、「神」
政治に「神」を持ち出すこと。
二つ目は、「ソーシャリスト(社会主義者)」。
マケイン陣営は、終盤で形勢不利とみるや「オバマは社会主義者でアメリカを社会主義の国にしたてようとしている」と大ネガティブキャンペーンをはった。
オバマ氏が打ち出した、「ミドルクラスの税率を下げ、そのかわり国民の5%を占める富裕層の税率をUPする」という新税金策を「社会主義」と呼んで非難したのである。
オバカな人たちはこの真偽をよくよく確かめもせずに「オバマは社会主義だ」キャンペーンをうのみにし、「働かないやつらのために俺たちが支払ってやる金などあるか!」と息巻いた。
もしもし、そんなあなたは5%の富裕層ではありませんよ。
人間とは恐ろしいものだと、今回の大統領選を身近で見ていてつくづく感じた。
これほどまでに人は簡単に洗脳されてしまうのか・・・。
そして、この国の半分はそういう人たちなのだということを改めて肝に銘じた。
そう、ここはもうバークレーじゃない。
周りの人がすべてリベラルで、私と同じようなものの見方・考え方をしているわけじゃないんだ。
情報を求め、選び、自らの力で確かめ、突き詰めるチカラ。
個人の信仰と世の中のルールとを混同しないという知性。
国をただすには全て「教育」にいきつく。
だからアメリカの歴史は、ここでオバマ氏を登場させたのかもしれない。
やっぱり、寄りすぎ?うふっ。