私が現役で仕事をしていたころ、あるクライアントと随分親しくお付き合いをさせていただいた。
私的に旅を共にしたり、夜の巷で随分酒を楽しんだりした。私より四・五歳年長だと思うがこの人が「偶さか」という言葉をよく使っていた。
最初、この言葉を知らなかった私は「えっ何の事?」と躊躇したが、話の前後から粗方こんな意味だろうと推察しながら受け答えをしたことを懐かしく思い出す。
「偶さか」「適さか」と書くが、「たまさか」と読み、【偶/適/会】[副] 時おり。時たま。たまに。」の意である。
古文書を読んでいると時折顔を出す言葉である。
じつはたまさかこんな漱石の句を見つけたのだが、その時はこの言葉が印象深かったから句帳の隅に書き留めていた。
たまさかに据風呂焚くや冬の雨 漱石
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