津々堂のたわごと日録

爺様のたわごとは果たして世の中で通用するのか?

ドンカッチョ

2006-09-09 14:38:01 | 随想
 魚の名前などというものは、地方/\で異なり方言の最たるものであろう。熊本で「ドンカッチョ」と呼ばれる、清流の水底に生息するこの川魚は、多分「ドンコ」なのだろうと思っている。オコゼのような不細工な顔がご愛嬌である。私が子供の頃は、近くの江津湖が格好の遊び場で、魚獲りが楽しみの遊びだった。「湖」とついているが、水前寺成趣園を水源とし加勢川に至る、周囲6キロほどの湖沼である。昔は阿蘇の伏流水を源とする湧水が豊かであったが最近は激減した。それでも、一日約40万トン程を湧水する、熊本のオアシスとして釣りやボート遊びの場所として市民に親しまれている。俳人中村汀女の生家も近く、遠くに阿蘇の峰々を望む豊かな風景は、彼女の作句の心象風景ともなっている。
 昭和28年熊本は未曾有の大水害に見舞われ、この江津湖もすっかり川底(?)が上がって現在にいたっている。それ以前の澄み切った江津湖の流れは小さな川魚の宝庫だった。シビンタ(タナゴ)やアブラメ(?)、ハエ(ハヤ)などが群れていた。下流域では鯉や鮒、うなぎ等の川魚漁も行われていて、舟着には川舟が幾艘ももやってあった。上流部は水深も深いところでも6~70センチほどで子供達にとっては最高の環境だった。その川舟の下が「ドンカッチョ」にとっての安息の場所で、川舟をゆっくり動かして網で捕らえるのである。当時は「ドンカッチョ」の上に、「イシカキ」という言葉を冠していた。ずっと私は「イシガキ」と濁って覚えていたのだが、「イシカキ」が本当らしい事を最近知った。舟の下といっても、川底にへばりついている訳ではなく、流れに流されまいと石の下の窪みなどに潜んでいる。その石を静かに動かす訳だが、「イシカキ」は「石掻き」なのだろう。大きいもので14~5センチ、小さいものでも4~5センチのものを七八匹捕まえて数時間を楽しむと、鼻歌気分でリリースして心豊かに帰るのである。
 後年の事だが、職場の仲間やその家族たちと釣りを楽しみ、釣果を屋外でフライや煮物にして楽しんだ事がある。あの「イシカキドンカッチョ」は、真っ白な身が美しい煮物になって皆の賞賛を受けたものだった。

 最近、江津湖では4~50センチクラスのシーバスが釣れると聞く。時は流れ魚の世界も様変わりしている。
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