一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

5千円札の一葉さん

2020-05-03 09:28:41 | 雑記
       5月2日は樋口一葉が生まれた日である。
       (明治5年5月2日生誕)

       わずか24歳で早世したから没後124年になる。

       一葉は早くして父と長兄が亡くなったため、
       10代半ばで戸主へ。
       母と妹の生活をみなければならなくなった。

       駄菓子屋や仕立物をしてわずかな賃金をもらい、
       友人知人から借金もした。

       生涯、口を糊することに苦しめられた一葉が、
       後世になって「お札」の肖像画になるとは、
       夢にも思わなかったであろう。

       日々生活に追われる一葉だったが、
       唯一の慰めが、小説の師・半井桃水との逢瀬だった。

       一葉は小説で身を立てようとしていたのだ。

       しかし、それも歌塾の中島歌子らに反対され、
       なくなく恋心を封鎖。
       (その頃、小説家や新聞屋はゴロツキと評判が
        悪かった)

       死の直前、
       『たけくらべ』で鴎外に激賞されたにもかかわらず、
       「どうせ、一時の人気なんて煙のように消えてゆくのよね」
       とすっかりひがんでしまった一葉。

       当時、
       軍医で文壇の重鎮であった鴎外に認められることは、
       望外の悦こびであったはずなのに、
       素直にはとれなかったのだ。

       (事実、一葉の葬式に「乗馬で見送りたい」という
        鴎外の申し出を、樋口家は断っている。
        わずか10数名の寂しい葬式だった)

       一葉の代表作は
       『たけくらべ』のほかに『にごりえ』『十三夜』   
       などたくさんあるが、
       私は死後公刊された『一葉日記』を推奨したい。

       それにはさいごまで
       桃水を慕う恋心が切なくつづられ、
       胸を衝かれる。