ある本を読んでいたら、
加藤八千代詩集『子供の夕暮れ』を引いていた。
そのあとがきにはこうあるそうだ。
「大人とは、子供の夕暮ではないのか」
社会のことをいろいろ教えられ、躾もうけて
やがて一人前の大人になってゆくーー
この過程を誰も疑わないけれども、
私はこのフレーズにドキッとする。
なぜならこの言葉には、
人間本来の存在感や輝きを放つのは子供時代
から青春期であって、それが次第にくだらなく
(だらしなく)黄昏れていったのが大人……
といったニュアンスが感じられるからだ。
実際、子供時代が終わったと自覚したのは
いつだったろう。
まさか自分が子供でなくなるなんてーー。
いつの間にか背がのびて、学校も卒業して
気がついたら大人の範疇にいれられてしま
っていた。
この中には、ちっとも成長していないのに、
といったスネた意味合いも籠められている。
ほんとうは、
大人は子供の夕暮れではない、
ときっぱり云いたいのに、そう云い切れない
自分がいる。
奇しくも今日は端午の節句である。
大人は子供の黄昏か?
しばらく私の心は揺れ動くのだろう。
※ 車を走らせていて見かけた農家の
こいのぼり