一枚の葉

私の好きな画伯・小倉遊亀さんの言葉です。

「一枚の葉が手に入れば宇宙全体が手に入る」

中原中也と鎌倉

2015-10-25 16:27:43 | 読書



      鎌倉は中也終焉の地である。

   
      昭和12年2月に寿福寺境内にある
      家に引っ越してきて、
      その年の10月には結核のため
      帰らぬ人となった。
      わずか30歳の短い生涯であった。


      「含羞」(はじらひ)
           『在りし日の歌』所収


        なにゆゑに こころ羞ぢらふ
        秋 風白き日の山かげなりき
        椎の枯葉の落窪に
        幹々は
        いやにおとなび彳(た)ちゑたり
              (中略)

        その日 その幹の隙(ひま)
                睦みし瞳
        姉らしき色 きみはありにし
        あゝ! 過ぎし日の
        仄(ほの))燃えあざやぐをりをりは
        わが心 なにゆゑに
          なにゆゑにかくは羞ぢらふ……
        

        
      私は、わずか30歳で生命の芽を
      もぎとられた中也の若さにたじろ
      いでいる。

      何歳になっても熟さない私自身の
      悔恨もあるが、
      中也が無事、中年以降へと齢を重
      ねていたら、どうだったろうと思
      うからである。

      
      老年を迎えた中也は、どんな詩を
      書いたのだろう。
      

      ※ 『中原中也の鎌倉』
            福島泰樹著 冬花社