喰われてもよし
つぶされてもよし
干されてもよし
一番甘くなって枯れよう
「ぶどう」
ああ、どうしてこんなに凝縮したことばが出るのだろう。
星野さんの著書『愛、深き淵より』にはこんなことが
書いてあった。
「私は絵に関してなにもわからなかったが、この自然の
ままに咲いている花を、そのまま写していれば、よい絵
が描けるようになるのではないかと思った」
星野さんは1972年に絵を描きはじめて以来、これま
で500点余りの作品を生み出している。
絵具のほかにサインペン、墨などを用いて。
奥さまの昌子さんをパートナーとしてからでも31年の
月日が流れた。
絵が先に生まれたり、詩が先だったり、そのときによって
異なるそうだ。
ベッドに横になったまま1日に2時間程度。
10日に1作品のペースは最初からほとんど変わらない。
もし星野さんが鉄棒から落下という致命傷を負わなかった
ら、体育教師として全うしたであろう。
では、下半身不随という怪我を負って不幸せだったかと
いうと、そうではないと思う。
一度は絶望の淵に陥っても、見事によみがえった。
ここに神や仏の加護があるのか、あるいは、
本人の努力(周囲の人の助けも含めて)のみが存在するの
か、正直いって私は分からない。
私だったら世をはかなみ、神や仏を恨んで生きるしかない
ような気がするからだ。