蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ウナギが故郷に帰るとき

2021年06月12日 | 本の感想
ウナギが故郷に帰るとき(パトリック・スヴェンソン 新潮社)

アリストテレスが自然発生説を唱えるなど、ウナギの生態は謎に包まれてきた。ヨーロッパのウナギは、サルガッソー海で産卵して8ヵ月もかけてヨーロッパの川に戻るらしい、という仮説があるが、サルガッソー海でウナギの成体は発見されていない。
川についたウナギはシラスウナギから黄色ウナギさらに黒ウナギへと変態していく。
といった、ウナギの科学的描写と、ウナギ漁が趣味だった父の思い出話が交互に語られる。

ウナギの7割が日本で消費されているそうだが、日本人としては、日本人以外にもあんな不気味なみかけの生物を食べている国があるんだ、などと思ってしまう。
また、ウナギは生命力が強く、井戸の底で数十年も生き続けた例もあるそうだ。

長らく道路舗装の仕事を続けてがんに冒されてしまった父とのエピソードが素朴で、ほのぼのしてとてもいい。
余談だが、あまり高収入とは思えない著者の生家は、広々して家族一人一人に部屋があってあまり使われない部屋すらあって広い庭もあればサウナもあったそうである。スウェーデンの住宅政策のおかげらしいが、うらやましい。
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長く高い壁

2021年06月12日 | 本の感想
長く高い壁(浅田次郎 角川書店)

昭和13年、人気ミステリ作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京へ派遣される。方面軍司令部の川津中尉とともに、北京から100キロ以上離れた蜜雲への出張を依頼される。同地の近くの張飛嶺で起きた兵員の大量死事件の調査をすることになるが・・・という話。

憲兵隊のベテラン曹長:小田島の酸いも甘いも噛み分けたキャラが秀逸で、出番をもっと増やしてほしかった。

中国近代を舞台にした小説が多く、兵士としての経験もある著者としては十八番の設定で、兵隊たちの振る舞いや当時の中国社会の描写がリアリティに溢れている。

著者得意の独白体で、関係者が事件の証言をするあたりからぐっとひきつけられて最後まで読んでしまったが、ミステリとしての謎解きは弱いかな、という感じだった。
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紅の凶星

2021年06月12日 | 本の感想
紅の凶星 (五代ゆう ハヤカワ文庫)
 
グイン・サーガ135、続編プロジェクト5

ヴァレリウスは、パロの食堂の娘アッシャに異常な才能を見出して魔道士として育成しようとする。カメロンは、魔道の力を借りてパロを乗っ取ってしまったイシュトヴァーンを止めようと、単身クリスタルパレスへ潜入する・・・という話。

続編プロジェクトでは、五代さんと宵野さんが交代で書いていて、五代さんはパロとヤガを舞台にしているが、「そんなことやっちゃっていいの?」というサプライズが続編プロジェクト第一弾「パロの暗黒」で起きた。
本作でも負けず劣らずのビックリが用意されていた。

ちょっと前から「ゲームオブスローンズ」のDVDをポツポツ見ているのだけど、まだ中盤にいくかいかないか位のところで、主人公だと思っていた人があっさりと殺されてしまって驚いた。

主人公とはいわないけど、あの人がこんなに簡単に死んでしまっていいものだろうか?まあ、もっともグインでは主要登場人物の2人もがいったん死んでから生き返っているからなあ(スカールは死んでなかったっけ?)
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朝が来る(映画)

2021年06月12日 | 映画の感想
原作に忠実に、特別養子を迎えた家庭と実母のエピソードを並べて描く。

原作に比べると家庭側の場面が多く、父母役の井浦新と永作博美もよかったが、特別養子の斡旋組織ベビーバトンの主催者役:浅田美代子の力の抜けた浮揚感?がある演技が特に印象的だった。

中学生で妊娠してしまった実母が、世間に圧力に負けてどんどん悪い方向に堕ちていく様子が本作のキモ。原作を読んでいるときは、読んでいるこっちも一体になって堕ちていくような転落感みたいなのが強烈だったんだけど、映画ではマイルドな感じで、実母役の人(蒔田彩珠)に共感できなかったなあ。
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博士と狂人

2021年06月12日 | 映画の感想
博士と狂人

オックスフォード英語辞典の編纂の経緯を描く。編集長?のマレー(メル・ギブソン)は、アメリカ人の元軍医マイナーからの投稿に注目し、協力を依頼する。しかし、マイナー(ショーン・ペン)は戦場での心理的後遺症に苦しみ、錯乱して殺人を犯し精神病院的刑務所?にいた・・・という話。

マレーは学位のない在野の学者で、特別に招請されて編集長?に就任するのだが、学内の権力争いや学者間の嫉妬に苦しめられる。この、描写が難しそうな筋書きがうまく映像化されていた。
ただそれだけでは、映画として盛り上がらないので、マイナーのエピソードを付け加えたのだと思うけど、実際のところ、マイナーの貢献って重要性が高いものだったのかな?
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