蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

新しい江戸時代が見えてくる

2021年06月08日 | 本の感想
新しい江戸時代が見えてくる 大石学 吉川弘文館

副題の「平和と文明化の265年」通りの内容。

■鎖国中も4つのルート(対馬、長崎、薩摩、松前)で交流は続いた。朝鮮人、アイヌ人、琉球人、オランダ人、中国人が日本国内で意義のある活動をつ続けた。鎖国とは中央政府による出入国管理であり、国内平和の維持に貢献した。

■1600年代中盤頃から文治政治が始まった。将軍は飾り物で幕閣ら官僚による統治が始まり、生産力の拡大とともに経済が発展した。

■亨保改革は将軍吉宗の独裁。行政のアーカイブ化が進み、大きな政府化した。これに対立したのが尾張藩主宗春だったが吉宗が圧勝。教育体制が整備され、誰もが矢立(ペンセット)と紙(メモ)を持ち歩いていることに外国人が驚いたという。

■新選組はラストサムライというイメージが強いが、実態は異なっていた。組織化が進み給料制を取り、日本全国のあらゆる身分の出身者がいた。軍備の様式化を図っていた。幕府の奥医師:松本良順の指導を受けて医療体制(西洋型病院)を整備していた。

■「江戸の達成」の章の序文(119ページ)から引用
世界的規模で、近世から近代への移行を見ると、日本の場合の移行の速さ、抵抗の小ささは注目されます。そして、これを可能にしたのが、江戸を中心とする列島規模での国家・社会の均質化、地域・身分をこえた「国民」の形成でした。「明治維新」とは、それまで譜代大名や旗本など「幕府官僚」が担っていた国政運営を、朝廷・親藩・外様藩などの官僚を加えた「新政府官僚」がになうようになった政権交代と位置づけられます。
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