蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ギルバート グレイプ

2006年02月12日 | 映画の感想
ジョニー・デップが「パイレーツ オブ カリビアン」に出演したことには若干失望した(実際、この作品での演技はぱっとしなかった)。

しかし、昨年「シークレットウインドウ」を見て、見直した。この作品でのジョニー・デップはとても魅力的だった。

彼の出演作はたいてい見ているのだけれども、「ギルバート グレイプ」はたまたま今まで見たことがなかった。
アメリカの田舎で、夫を亡くしてから身動きできないほど肥満した母親と知的障害がある弟たちの面倒をみながら暮らしているギルバートは、キャンピングカーで訪れた女の子とつき合い始め、母と弟に縛られている日常に次第に嫌気がさしてきて・・・という話。

ジョニー・デップが、家族と外から来たチャーミングな女の子の間で微妙にゆれる心理を見事に表現している。夫の死からどうしても立ち直れない母親が、それでも家族への厚い愛情を示す場面もよかった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

GOTH(僕の章)

2006年02月11日 | 本の感想
「GOTH(僕の章)」(乙一 角川文庫)

著者があとがきで述べている通り、ホラーの味付けがしてあるものの、叙述トリックもののミステリ。3つの短編が収録されてるが、狂言回し役は共通。「リストカット事件」のトリックが一番鮮やかだけれども、ホラーとしての出来は「土」の方が良くて、けっこう怖がらせてもらえる。「声」はこの作者としては珍しくちょっともたつき気味。

しかし、本編に負けず劣らずおもしろいのが(文庫版)あとがき。編集者が見たらのけぞりそうなことが書いてある。
乙一さんは、その作品もさることながら、あとがきやインタビューでの発言もとても楽しいものが多い。既存の作家に対するイメージを破壊するような発想や発言が目立つ。
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オーデュボンの祈り

2006年02月10日 | 本の感想
「オーデュボンの祈り」(伊坂幸太郎 新潮社)

伊坂幸太郎さんのデビュー作。

新潮ミステリ倶楽部賞の受賞作。いやーこの作品でよく受賞できたなあ。
いや面白くないとか、出来が悪いというわけではなくて、かなり変な作品で、カバーの紹介文に書いてある通り「怪作」と呼ぶべき内容だから。しかし、その後の伊坂さんの活躍を見れば、受賞させた審査員の目利きぶりを讃えるべきなのでしょう。

舞台は仙台のすぐそばの海に浮かぶ小さな島。仙台から船ですぐ近くなのに、江戸時代以来鎖国状態にあって本土とは全くと言っていいほど連絡がない。しかし、唯一の交通手段である渡し船で主人公はこの島に渡ってくる。
この島には未来の出来事を予知でき、しゃべることができる案山子や殺人を公認された人がいたりする。その案山子がある日「殺された」ことから物語が展開しはじめる。

なぜ仙台の近くにある島が100年以上も鎖国できたのか、なぜ案山子が思考ししゃべることができるのか、などについてはいちおうの説明があるが、合理的では全くなくていいわけ程度にしか聞こえない。作者も合理性を追求しているようには思えず、読んでいる方はつぎつぎに提示される(無茶な)設定やおもわせぶりの会話に翻弄されっぱなし。

それでも読み進むのがさして苦痛でないのが不思議。

一見関係がなさそうなエピソードを積み重ねて最後に収束される手法は伊坂さんの他の作品にもみられる特徴で、著者の紹介を読むと映画を見るのお好きなようなので、その影響を受けているのだろうか。
好き嫌いがはっきり別れそうで、あまり、人には勧めにくい本のはずなのだけれど、読み終わった後、他の人の感想を聞きたくなる本でもある。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

カーリング

2006年02月09日 | Weblog
冬のオリンピックがもうすぐ始まる。冬の競技を現場で見た経験はないのだが、想像では、現場で見るよりTVで解説付きで見るほうが面白い競技が多いような気がする。

その場で見ている方が面白そうなのは、アイスホッケー、ショートトラック、採点系のスキーくらいか。

アルペンはゴールで見ててもつまらなそうだし、コース途中では一瞬のうちに通りすぎてしまう。

ジャンプはよっぽどいい席に座らないと飛行曲線の頂点部分しか見えなさそうだ。
スピードスケートはどちらが勝っているのかわからないし、直接競り合わないのが面白みに欠けるように思う。

フィギュアスケートはその場にいた方が良さそうだけど、よほど目が肥えていないと、技の解説をしてもらわない限り何回回転しているのかわからないのではないだろうか。

TV中継の方が圧倒的に有利なのはカーリング。

サークルを真上から見れないと楽しみが半減しそうな気がするし、プレーの間の作戦を考えている時間が長くて解説がないと間延びしそうだから。

長野の時は男子チームのスキッパーがちょっとキムタクに似ていて、勝ち進んで有名になったら騒がれそうと思っていたのだが、強豪チームとの対戦で最後の最後に負けてしまい、(NHKの解説の人も「これは日本の勝ちです」と断言したのに数分後には負けていた)話題にならなかった。

日本ではマイナー競技で、知る人も少ないかもしれないが、ルール自体はさほど複雑ではないし、実況・解説者が優秀ならTVで見ていて抜群に面白い。
スポーツというよりは頭脳ゲームに近く、プロ野球の監督で長島・星野より野村・森が好きという人ならとても楽しめると思う。勝ち進まないといい時間帯の中継は期待できないので、日本チームの健闘を期待したい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぼくのキャノン

2006年02月08日 | 本の感想
「ぼくのキャノン」(池上 永一 文藝春秋)

最初に登場人物を紹介したページがある。一部を引用すると、
「喜屋武マカト  実質的に村を支配するオバァ。キャノンを祀る巫女である」
「樹王  現役の海人で隻腕の老人。口数は少ないが、村でも一目置かれた存在」
「チヨ 盗品を売って村の維持費に当てる、天才的な泥棒。マカト、樹王と共闘する」

このページを読んだ時、読むのをやめようかと思った。作者、作品の内容ともに全く予備知識がなかったので、虚構性が非常につよいファンタジーだと思ったからである。(私は、昔はそういう本が好きだったけれど、最近は年のせいか、例えて言うとカツ丼が胃にもたれるのと同様の感覚で、読む進むのが苦痛になることがあるためである)

山上に残された旧日本軍の大砲を守り神として、村を維持、発展させていこうとする人たちの話。この村は異常に裕福なのだが、その資金のでどころは村のリーダー(先にあげた三人)以外は知らない。リーダーは年老い次代への引継ぎを模索しているが、そこに巨大資本が村をリゾート開発しようと現れる。

こういう筋なので、虚構性はあまり強くない物語なのだが、一方で沖縄戦、世代間の対立、開発か環境保全か、といった一つ一つが重そうなテーマがちょっと無理してつめこまれているようにも思われる。

しかし、重苦しいテーマについて何か主張しようとしているわけではなくて、いろいろ憂鬱な心配事はあるけれど昔なじみの場所で皆で楽しく末永く生きていこうよ、というのが作者のいいたいことのような気がする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする