蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ぼくのキャノン

2006年02月08日 | 本の感想
「ぼくのキャノン」(池上 永一 文藝春秋)

最初に登場人物を紹介したページがある。一部を引用すると、
「喜屋武マカト  実質的に村を支配するオバァ。キャノンを祀る巫女である」
「樹王  現役の海人で隻腕の老人。口数は少ないが、村でも一目置かれた存在」
「チヨ 盗品を売って村の維持費に当てる、天才的な泥棒。マカト、樹王と共闘する」

このページを読んだ時、読むのをやめようかと思った。作者、作品の内容ともに全く予備知識がなかったので、虚構性が非常につよいファンタジーだと思ったからである。(私は、昔はそういう本が好きだったけれど、最近は年のせいか、例えて言うとカツ丼が胃にもたれるのと同様の感覚で、読む進むのが苦痛になることがあるためである)

山上に残された旧日本軍の大砲を守り神として、村を維持、発展させていこうとする人たちの話。この村は異常に裕福なのだが、その資金のでどころは村のリーダー(先にあげた三人)以外は知らない。リーダーは年老い次代への引継ぎを模索しているが、そこに巨大資本が村をリゾート開発しようと現れる。

こういう筋なので、虚構性はあまり強くない物語なのだが、一方で沖縄戦、世代間の対立、開発か環境保全か、といった一つ一つが重そうなテーマがちょっと無理してつめこまれているようにも思われる。

しかし、重苦しいテーマについて何か主張しようとしているわけではなくて、いろいろ憂鬱な心配事はあるけれど昔なじみの場所で皆で楽しく末永く生きていこうよ、というのが作者のいいたいことのような気がする。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「お金とモノから解放される... | トップ | カーリング »

コメントを投稿

本の感想」カテゴリの最新記事