蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

オーデュボンの祈り

2006年02月10日 | 本の感想
「オーデュボンの祈り」(伊坂幸太郎 新潮社)

伊坂幸太郎さんのデビュー作。

新潮ミステリ倶楽部賞の受賞作。いやーこの作品でよく受賞できたなあ。
いや面白くないとか、出来が悪いというわけではなくて、かなり変な作品で、カバーの紹介文に書いてある通り「怪作」と呼ぶべき内容だから。しかし、その後の伊坂さんの活躍を見れば、受賞させた審査員の目利きぶりを讃えるべきなのでしょう。

舞台は仙台のすぐそばの海に浮かぶ小さな島。仙台から船ですぐ近くなのに、江戸時代以来鎖国状態にあって本土とは全くと言っていいほど連絡がない。しかし、唯一の交通手段である渡し船で主人公はこの島に渡ってくる。
この島には未来の出来事を予知でき、しゃべることができる案山子や殺人を公認された人がいたりする。その案山子がある日「殺された」ことから物語が展開しはじめる。

なぜ仙台の近くにある島が100年以上も鎖国できたのか、なぜ案山子が思考ししゃべることができるのか、などについてはいちおうの説明があるが、合理的では全くなくていいわけ程度にしか聞こえない。作者も合理性を追求しているようには思えず、読んでいる方はつぎつぎに提示される(無茶な)設定やおもわせぶりの会話に翻弄されっぱなし。

それでも読み進むのがさして苦痛でないのが不思議。

一見関係がなさそうなエピソードを積み重ねて最後に収束される手法は伊坂さんの他の作品にもみられる特徴で、著者の紹介を読むと映画を見るのお好きなようなので、その影響を受けているのだろうか。
好き嫌いがはっきり別れそうで、あまり、人には勧めにくい本のはずなのだけれど、読み終わった後、他の人の感想を聞きたくなる本でもある。
コメント
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