蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

大学の話をしましょうか 3/5

2005年10月27日 | 本の感想
森博嗣さんが書いた「大学の話をしましょうか」(中公ラクレ新書)を読み終わりました。
森さんは名古屋大学工学部(名大にはこの学部名称はなくなってしまったそうですが)の助教授にして、独特の雰囲気を持つミステリやエッセイをたくさん著している作家でもあります。

森さんの最近のHPを見ると、どうも半年くらい前に助教授はやめてしまったようにも思えます。それで、大学の内輪話を出版してみる気になったのでしょうか?
といっても暴露話とか告発本になっているわけではなく、これまでの森さんの日記やエッセイに書かれている内容と重なるところが多くなっています。
このため、すでに森さんの日記等をたくさん読んでいる方にとってはあまり新鮮味はないと思いますが、初めて読まれる方があれば、視点や考え方の斬新さに驚くかもしれません。

私は、森さんの小説は6冊読みました。このうちスカイクロラシリーズ(SF戦記もの)は好きなのですが、あとの4冊のミステリ小説は、どうも、その、面白いとはどうしても思えません。一方、日記、エッセイは抜群に面白くて、HPに掲載された時点ですべて読んでいたにもかかわらず、幻冬舎から出版された日記もすべて買い、読み直したほどです。

日記などによると、森さんは、仕事や研究に時間を割くため、食事は一日一回、新聞もテレビも見ないそうですし、子供の世話も一切しない(参観日とかに一度として行ったことがないそうです)。また、若いときは研究に没頭して3日ほど眠らなかったとか、1時間で400字詰め原稿用紙でいうと数十枚分の小説を書いてしまうとか、ものすごい集中力の持ち主です。
その分他人にも厳しく、時々同僚や学生、編集者に対いる辛口のコメントも散見されます。すべてが本当なのかどうかは別として、また、自分では到底実行できないのですが、私はこうしたハードボイルドな生活にあこがれを持っているので、森さんの日記、エッセイに魅力を感じるのだと思います。

ところで、しばらく中断していたHP上での日記の公開が再開されました。助教授と作家の二重生活、という点にも興味があったのですが、どうも(大学を退職したかどうか確実なところは知りませんが)今は作家専業みたいです。また、ある意味、森さんがこの世で最も愛していた生物であるように思える飼犬のトーマもいなくなってしまったようです。
しかし、独自性のある視点、ユニークな考え方、シャープな表現は今も健在です。
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