蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ハードワーク 3/5

2005年10月26日 | 本の感想
ポリー・トインビーさんが書いた「ハードワーク」(椋田直子訳、東洋経済新報社)を読み終わりました。

イギリスの新聞記者である著者が、会社の休暇中に低所得者用の住宅に住み、各種の最低賃金スレスレの待遇の仕事(学校給食の調理や清掃、病院のポーター等)のパートタイマーとして数ヶ月働いた経験を描いたルポです。

著者はサッチャー流の効率至上主義、政府機能の縮小という政策に反対しており、その結果として生み出された「公共な仕事」のパートタイマーとして生活がいかに劣悪な環境にあるかを伝えようとしています。

しかし、何と言うか、著者が体験した仕事の内容や待遇がそんなにひどいものには思えませんでした。著者は55歳で、何の特技・資格もないというフリで仕事を探すのですが、次々に新しい仕事が見つかりますし、時給も日本の普通のパートタイマー並です。それなりにきつそうな仕事もありますが、長く続けたら体をこわしてしまう、というほどでもなさそうでした。

著者は「公共的な仕事」が人材派遣会社に委託されていくことで、なされる仕事の質が低下していくことを懸念していますが、むしろ、そうした仕事が民間に開放されていくことで、そこそこの年齢の人でも自分の好きな時間にパートタイムで働けるという状況が整備されたと言えないこともないと思いますし、民間に開放されることで質が上がる場合だってあるでしょう。(日本の例でいえばそういう例の方が多いような気がします)

人材派遣会社に対する批判(ピンハネ分が多額であるとか、応募者に対する待遇がひどいとか)には共感できました。最近、私の働いている職場でも派遣社員の方が増えてきて、そうした方から派遣元への不満やぼやきをよく聞くせいかもしれません。
昔から、口入屋の評判は高利貸し、周旋屋とならんでかんばしくないことが多いように思いますが、帳場に座って他人の労働や辛苦の上前をはねる、という仕事の性格上、しかたないのでしょうか。(私の仕事も周旋屋の一種で、日々そこはかとない嫌悪とか後悔を感じることが多いのです)

ビジネス関係の出版社が出す翻訳書は訳がひどいことが多いような気がしますが、この本は、かなり読みやすい訳だったと思います。
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