蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

JR上野駅公園口

2020年12月13日 | 本の感想
JR上野駅公園口(柳美里 河出書房新社)

福島に生まれた主人公は、苦しい家計を助けるために若いころから出稼ぎに明け暮れる。子供も成長しやっと一息ついたところ、長男と配偶者が急死してしまう。人生をはかなんで?主人公は福島の安定した生活を捨て上野公園でホームレス暮らしを始める・・・という話。

あとがきによると、本書は上野公園の「特別清掃」(皇族が上野公園にある美術館などを訪れる前などに、公園内からホームレスを(一時的に)排除すること)に想を得て書かれたらしい。なので、そういった面を批判的に見る内容かというとそうでもなく、主人公は現上皇と同じ年に生まれ、息子は現天皇と同い年という設定がイマイチ生かされていないような気がする。

息子が若くして一人暮らしの東京のアパートで急死し、その葬儀が福島で行われる。この葬儀の描写が昔ながらのもの(喪主の自宅に菩提寺の和尚さんを読んで読経してもらい、近所の人総出でおときの食事の用意をして、多人数である意味にぎやかに死者を送る)で、なつかしさを感じた。最近の葬式は簡素化が進みすぎているような気がするなあ。

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