蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

りんごは赤じゃない

2008年01月21日 | 本の感想
りんごは赤じゃない(山本美芽 新潮文庫)

ある公立中学校の美術教師のユニークな授業方法を紹介するノンフィクション。

この教師は、就職経験がない専業主婦だったが、夫の専横に耐えかねて離婚。
30代なかばにして子育てをしながら教職免許を取得して就職する。生徒には好評だが異端とも言える授業法に対して周囲の妬みやいやがらせなどを受けつつも、やがて文部省の幹部クラスも注目するほどの評価を受ける。

その授業は、生徒にテーマ(例えばある人物の評伝)を決めさせて、そのテーマを生徒自身に調査させ、調査の結果を絵としてまとめさせる、といったもの。絵も徹底して描きこませる。

相手は中学生なので、皆が皆このような指導方法に沿って成果を出してくれるわけではないが、この教師にかかると不良がかった生徒もおとなしく言うことを聞くという。
その原因を著者は、
①美術室を花などで美しく飾りあげ、教師もきちんとした身なりをすることで、生徒に威厳を感じさせる。
②どんなことでも良いので生徒をほめる、認めてあげることにより生徒にプライドを持たせる。
などであるとする。

自分自身の中学・高校時代を思い出すと、美術の先生って「画家としては食っていけないから仕方なく教師をやっている」という人が多かったような気がする。

私は絵を描くのが好きで、中学生の時ある展覧会に出品したら、作品を見た美術科のある高校の先生がその高校に来ないかと誘ってくれた。そこで中学校の美術の先生に相談したら「絵を職業にするのは大変だぞ。それにあの高校の美術科に行ったら「目指すは東京芸大のみ」でしんどいぞ。そのコースに乗れないとせいぜいが学校の先生だ」なんてとてもネガティブなことを言われて、やめてしまったことを思い出した。(私の絵の才能は今振り返って見ると十人並みだった。だからむしろこの先生には感謝している)

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