蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ボンボン

2008年04月19日 | 映画の感想
ボンボン

アルゼンチンの映画。

私にとって南米の田舎町というと、船戸与一さんの一連の作品に描かれている、油断もスキもない非情で苛酷な世界、というイメージがある。しかし、この映画の登場人物は、皆人なつこくて親切でおせっかいなくらい。
映画がファンタジーなのか、(そうはいってもラテン系の人がほとんどのわけだから)船戸ワールドこそが誇張しすぎのフィクションなのかはわからない。

主人公は、長年ガソリンスタンドで働いてきたがクビになってしまい、再就職もままならず、嫁いだ娘の家に居候して肩身がせまい。
ある日、ドライブ中に立ち往生している人を助け、その人の家に故障車を牽引して送っていく。その人は大金持ちで、亡父が残した大型犬(ボンボン)を持て余しており、主人公はていよく犬を押し付けられてしまう。
この犬は由緒正しい血統の名犬で、たまたま知り合ったブリーダー(?)といっしょにコンテストに参加すると上位入賞する。
しかし、いざ種付けしようとしたら、どうもインポ(?)のようでうまくいかず、主人公とブリーダーはがっくり。(コンテストで認められて種付け料で稼ぐ、というのがブリーダーの収入源になっているらしい)

あまり起伏のないストーリー。ちょっとした不幸に特に立ち向かおうという意欲もなく諾々と運命を受け入れている主人公と、茫洋とした風貌で愛想がないようなあるような犬のとりあわせがよくマッチしていて、犬を助手席に乗せて(大型犬なのでフロントガラスごしに見ると人間が乗っているくらいの感じに見える)荒野の道をドライブするシーンは一種の詩情をただよわせている。

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