蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

本棚探偵の生還

2014年11月05日 | 本の感想
本棚探偵の生還(喜国雅彦 双葉文庫)

「冒険」、「回想」と箱入り版を買い、内容も大変面白かったのだけれど、その後、間があいたこともあって、「生還」の箱入り版が出たのは知らなかった。
ちょっと前に「最後の挨拶」が出版されたのを本屋の店頭で知って、「生還」の存在にも気づいたのだが、間もなく文庫が出そう、とのことだったので待っていた。
「生還」も良かったので、今は「最後の挨拶」を買おうか否か迷っているところ。(デフレ慣れして箱入り版の値段にどうも抵抗が…)


「本棚探偵」シリーズで一番面白いと思える挿話は、古本蒐集の地獄(あるいは天国)にはまってしまった人たちの生態?で、著者のように小ぎれいに整頓されていると「地獄」感はあまりないのだが、「生還」でも紹介されている日下三蔵さんのように、本が多すぎて生活するスペースすら脅かされている家の写真などは、見てはいけないものを見てしまったような気分にさせられる。
日下さんが、ダブリとかを気にせず、どんどん古本を買ってしまう理由が「生還」では紹介されている。
それは、「売っているから」。
コレクションとか嗜好といった俗な水準をとうの昔に超越した、一種神々しさすら感じさせる、原理主義的ドグマですな。

著者がエッセイを書くために行う企画モノ?(マラソンしながらの古本屋巡りとか)は、どうも、わざとらしさがあってイマイチなのだが、「生還」における只見線で読書する企画はなかなかよかった。風光明媚な窓外の景色を無視してひたすら読書する、という内容。私も読書の場所の80%くらいは(通勤)電車の中であるせいか、本を読むということをプリミティブな悦び?みたいなものを感じた。

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