蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

王の没落

2022年09月26日 | 本の感想
王の没落(イェンセン 岩波文庫)

15世紀末から16世紀初頭にデンマークを中心とする北欧世界に覇を唱えたクリスチャン2世を、ミッケル・チョイアセンという傭兵(架空の人物)の目を通して描く歴史文学。

冒頭には、この時代の北欧史の概要解説と登場人物一覧がついているし、巻末には詳し目の地図も掲載されており、岩波文庫とは思えない?けっこうなサービスぶり。

なのだが、出版されたのが100年以上前で現代の感覚と合わないせいか、あるいは(多分こっちだと思うが)翻訳がこなれていない(なんというか小説っぽくないと感じた)せいか、読み進むのにとても苦労した。

そこで、「これは「氷と炎の歌」シリーズの外伝なのだ」と思い込んで読んでみることにした。そうすると幻想的な筋書きは魔法のせい、ミッケルの衝動的な行動は過酷な戦争体験による精神障害のせい、みたいに思えてきて、いくらか面白くなってきたような気がして、いちおう、最後のページまでたどりつくことができた。

上記は、私の読み方がまずいだけだと思う。何しろ、本作はノーベル賞作家の代表作とのことなので。
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貧者の戦争3

2022年09月26日 | Weblog
貧者の戦争3

9月上旬、ウクライナ軍はハルキウ州で攻勢に出て同州全域を「解放」した。クリミア半島のロシア軍の基地を攻撃するなど、これまでウクライナ軍の反攻は南部中心になると見られていて、ロシア軍の守備は南部に偏っていたという。情報の秘匿が難しいご時世にあって陽動作戦が見事に成功したようにみえる。
「ウクライナ軍には児玉源太郎でもいるのか」という冗談が聞かれるほどの手際であった。

このような陽動作戦はどちらかというと富める者の戦略であって、軍事的な貧者=ウクライナ軍、軍事的な富裕者=ロシア軍という構図は逆転しつつあるのかもしれない。

NHKの番組で、キーウで(比較的)安全な暮らしを送るウクライナ人は、祖国防衛戦争に貢献できないと考えて罪の意識を覚えるという人がいるという。番組では「ギルティ・シンドローム」と呼んでいた。
祖国が侵略された時、命を惜しんで外国に避難したとしても、精神的には危機に陥ってしまうということで、まことに戦争というのは罪深い。

裏返して見ると、ウクライナ軍の士気は非常に高いものと想像できる。西側援助で兵器などの物量面でもロシア軍の優位が崩れつつあるとすると、意外に早く「解放」が進むのかもしれない。

しかし、ウクライナ側も、(「解放」が実現したとしても)ロシア系住民が多い東部2州やクリミアをどうするのか、は頭が痛いところ。こうした地域で強硬な手段にでれば、外国世論が手の平返し・・・なんて事態もありえるだろう。
一方で「ギルティ・シンドローム」になるほど高まってしまった愛国心をどうコントロールしていくのかも難しい課題だ。

今や救国の英雄とならんとしているウクライナ現政権なら、ある程度のところで妥協したとしてもそれなりの支持が得られるはず。穏健で冷静な判断が望まれるところだ。
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