蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

炎と血 Ⅰ

2022年09月25日 | 本の感想
炎と血 Ⅰ*ジョージRRマーティン 早川書房)

「氷と炎の歌」シリーズを遡ること300年、ターガリエン家のエイゴンはドラゴンに乗って後にキングスランディングとなる地に降り立ち、ドーンを除くウエスタロス全土をその支配下に置く。ターガリエン王朝の初代エイゴン一世、その息子のエイニス一世、メイゴル一世、孫のジェへアリーズ一世までの治世を描く。

「氷と炎の歌」シリーズでは、史実?はあまり詳しく語られず、登場人物たちのエピソードを繋いでいく形をとっているが、本作では史実だけを淡々と語っていく。ウエスタロス世界史の教科書みたいな感じ。
「氷と炎の歌」のあまりの進行の遅さに辟易(まあ、そういう迂遠なところが魅力なんだけどね)していたので、史実?がサクサクと進むメイゴル一世のあたりまではよかったのだが、作者の悪い癖が出て?ジェへアリーズのパートになると、元のペースに戻って?どうでもいい話(例えば初夜権の廃止の経緯とか)が延々と続いて、ちょっともたれた。

日経新聞の土曜版で佐藤賢一さんの「王の綽名」というコラムが連載中で、毎週楽しみにしているのだが、西洋の王様ってことごとく綽名がついているみたいで、しかも、わりとちゃんとした史書に記録されているらしい。
本作でも征服王、残酷王、調停王などの綽名が登場するから欧米のメンタリティなんだろうな。日本でも綽名みたいなものはあったんだろうけど、史書には書かれてないよね。秀吉がハゲネズミと呼ばれていたとかは綽名とは言えないかな。

シリーズにおけるドラゴンって、現代の核兵器みたいなもので、兵器として使えば決定的な打撃力を持つけど、威力がありすぎてむやみに使うと諸侯や民衆の離反を招いてしまう、という設定になっているところに味がある。
ドラゴンの炎ってまさに核兵器なみの燃焼力があるようで、そんなエネルギーを生成するには莫大な食糧を必要として、当時の生産力では、本書のように多くのドラゴンを養っていけないと思うのだが、そんなこと考えるのは野暮すぎる。きっと、ヴァリリアの魔法科学?で原子炉のようなのを体内に持っているのだろう。
コメント
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