蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

自由研究には向かない殺人

2022年09月04日 | 本の感想
自由研究には向かない殺人(ホリー・ジャクソン)

ピッパは高三生。ピッパの住む町リトル・キルトンで5年前に起きた同じ高校の女子学生:アンディの失踪事件は、犯人と目された同級生の男子高校生:サルが自殺したことで未解決となっていた。サルが犯人とは思えないピッパは事件を自由研究の対象にして関係者へのインタビュウを始める・・・という話。

自家用車を乗り回し、飲酒やドラッグが当然のパーティ(カラミティ・パーティ)への参加を親が公認?しているアメリカの高校生は、しかし一方で学校の課題や大学進学の準備(統一試験?もあるけど、どちらかというとエッセイや面接の準備の方が重要みたい)などの予定で手帳がビッシリみたいな面もあるようだ。そして(これは日本も同じだろうが)SNSなどのデジタルツールが欠かせないものになっていて、事件解決のカギは「いかに関係者のサイトのパスワードを知るか?」だったりする。

保有者の日常のほぼすべてが記録されているともいえるデジタル機器は、現実の犯罪捜査においても決定的な証拠になりそうで、捜査機関がグーグルなどに開示請求したくなるもも無理はない。というか犯人候補のサイトのセキュリティを突破できるならミステリが成立しなくなっちゃう。

前中盤の、犯人候補をあげては消していく部分がやや冗長な感じだが、ピッパの飼い犬が(調査をやめろという犯人の脅迫により)姿を消すあたりからテンポがよくなって、犯人の意外性は十分だし、謎解きのプロセスの二重構造も面白かった。

ただ、(探偵役の宿命?かもしれないが)ピップのキャラは出来すぎだよなあ。成績優秀で品行方正、家族や友人への思いやりも十分あり、脅迫にも屈しない鋼のメンタルを持つ・・・弱味のなさが欠点かも。
コメント
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