蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

刑事のまなざし

2014年08月05日 | 本の感想
刑事のまなざし(薬丸岳 講談社)

少年鑑別所の法務技官(心理カウンセラーみたいなもの?)から刑事に転職するという異色の経歴を持つ主人公(夏目)が、事件を解決していく連作集。

最初の「オムライス」がとても良かった。
看護師の主人公は、夫の死後、入院患者の一人と再婚する。再婚相手は、失業後、働こうともせず、主人公や継子に暴力をふるう。その再婚相手が自宅に放火されて殺害され・・・という話。
よくある平凡な設定から、意外などんでん返しがあって、ちょっと驚かされた。(ただし(ミステリ短編としてよくできてはいるが)後味はとても悪い)

後続の短編は、いずれも家族関係のもつれが事件の背景になっていて、似たような感じの内容が多く、解決もやや強引な感じがした。
(特に、最後の一編(書名と同じタイトル)は、登場人物の行動がかなり不自然だと思う)
もともとは、雑誌に少し間をあけながら掲載された作品群なので、別々の独立した短編として、時間をあけて読めば、もっと良く感じられたのかもしれないけど。

(蛇足)
著者の作品を読むのは初めてだったが、乱歩賞作家ということもあって、本屋の店先とか書評とかで著者名を見かけることはよくあった。
何をカン違いしたのか、私は、著者の名前を「薬丸缶」さんだと思い込んでいて、「カンさんか、変わったペンネームだねえ」なんていつも思っていた。
でも「岳(ガク)」さん、だったんですね。大変失礼しました。思い込みは恐ろしい。
コメント
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