蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

フライト

2013年03月22日 | 映画の感想
フライト

主人公のウィトカー(デンゼル・ワシントン)は、ベテランの腕ききパイロットだが、アルコールとコカインの中毒で、搭乗中すらこっそり酒を飲んでいたりする。
あるフライトの終わり近く、昇降舵が故障して飛行機は急降下を始める。ウィトカーは冷静さを失わず、着陸の適地をさがすため、下向きになったまま戻らないと思われる昇降舵を無効にして航続距離を伸ばそうと背面飛行をする。広い野原をみつけて姿勢を元にもどし、からくも胴体着陸を成功させ、最小限の犠牲でアクシデントを乗り切った。

ちょっと前に、アメリカのどこかで故障した飛行機を街中の川に不時着させた機長がいたが、直前のアナウンスで乗客に向かい「私たちはこうした訓練を受けているから信頼してくれ」みたいなことを言ったと聞いたような気がする。

そういえば、私の同級生が、何を思ったか40代になってから、急に飛行機の免許を取りたくなって、訓練を重ねて取ってしまった。
どこまで本当かわからないが、彼によると訓練の中では、宙返りとか、上空でエンジンが止まっても安全に着陸できるようにするなんてものもあったそうで、自分の操縦には絶対の自信を持っていた。(しかし、彼が操縦する飛行機に乗るのは遠慮しておいた)
セスナ機程度でもそうした訓練をするくらいなのだから、旅客機のベテランパイロットともなれば、この映画のような絶体絶命の危機でも、もしかしたら本当に沈着冷静に最善の手がうてるものなのかもしれない。(しかし、まさか大型のジェット機で背面飛行をしようとは思わないだろうけど・・・まあ、そこがフィクションということですね)

ウィトカーは、気絶しているうちに血液検査をされてしまい、アルコールとコカインを検出されたことを告げられる。アル中のベテラン?でもある彼は、こうした危機を嘘とごまかしで切り抜けることにも慣れており、今回もパイロット組合が雇った弁護士のおかげもあって、あと一息で逃げ切れそうになるが・・・という話。

序盤30分ほどの不時着シーンの迫力があまりにも物凄い(見ていて怖くなるほど)ので、どうしてもその後の本編?が間延びしたように感じられてしまう。
「事故の原因は飛行機にあったのか、それとも機長がアル中だったせいか」みたいな法廷ドラマでも、ウィトカーの苦悩を心理劇的に描くのでもない(ウィトカーは最後まで全く態度を改めようとしない)ので、「アル中ってこんなに恐ろしいものだぜ。家族も友人も職業もなくしてしまうよ」みたいなお説教を聞いているような気分になってくる。
随所にキリスト教的な思想も感じさせるので、なおさらだ。
それでも、ウィトカーがラスト近くで、それまでの彼の行跡からは想像できないような行動に出たとき、案外唐突感がなくて、「ああ、そういば、あんな伏線もあったし、間延びしたかのような展開も今考えると理詰めのためだったのかも」なんて思えるのだから、脚本、演出、役者が粒ぞろいだった、ということなのだろう。

脇役だが、ウィトカーの友達(ヤクの売人。泥酔したウィトカーのきつけをするシーンが秀逸)、ベテランCAのマーガレット、事故調査委員長が、とても良かった。
コメント
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