蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

赤塚不二夫のことを書いたのだ!!

2007年10月06日 | 本の感想
赤塚不二夫のことを書いたのだ!!(武居俊樹 文春文庫)

赤塚不二夫の担当編集者が書いた評伝。イメージ通り赤塚は酒好き、女好きだったようだが、私が想像していたよりも執筆にも熱心だった。

私の記憶ではバカボンの連載終了以降はめだった作品がなかったように思っていた。というのは「レッツラゴン」の連載時、私はサンデーをよく読んでいて、「巨匠の悪ふざけか?」「もっとマジメに書いて欲しい」なんて立腹して「もう赤塚はダメだな」なーんて生意気にも思っていたのだ。しかし、むしろギャグを超えたナンセンスという意味ではこの作品が彼の最もお気に入りだったとこの本には書いてある。
子供には理解できない領域に達していたのだろう。しかし、サンデーが子供向けの雑誌であることを考えれば読者を無視していたともいえる。

全盛期を越えても病気などで入退院を繰り返すようになるまでは相当量の仕事をこなしていたという。
美空ひばりの熱烈なファンだったそうで、そのひばりとデートするくだりはごく短いが印象に残るエピソードとなっている。

「アイディア」とよばれる赤塚の作品の粗筋の構想は(レッツラゴン以降は特に)相当部分編集者としての武居に依存していたようだ。
武居は、自宅どころか編集部にも寄り付かずフジオプロに入り浸っていて、赤塚と飲み歩く奔放な生活が描かれている。
一見、破滅型の典型ともいえる赤塚と同様の性格なのかとも思える。しかし、本書は、細かいエピソードまでよく記憶(あるいは記録?)して記述されていて、行き当たりばったりのいい加減な人でなかったことがわかる。
定年まで小学館につとめたことや、(あとがきで紹介されているが)自宅をうまく転がして豪邸をゲットしていることなどからしても、実は相当用意周到で実務的な人であったと想像される。
コメント
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