蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ニート

2006年09月02日 | 本の感想
ニート(絲山秋子 角川書店)

一般的な社会人コースを外れてしまった人や外れかけている人を描く短編集。

表題作ともう一作「2+1」という短編は続き物で登場人物が同じ。著者自身を意識したなりたての女性小説家と働く意欲をなくして引きこもり生活をしている知り合いの男の話。
この男は街金に追われて外出は一切せず、食事は週3回インスタントラーメンと具なしのチャーハンを食べるのがやっと。一日中パソコンの前で自分や知り合いのサイトを眺めている。
実話ではないだろうけれど、著者の周辺で似たようなことはあったのだろうと推測できる。この生活は人間の生存条件ぎりぎりのところで、こんなことを強制されてやったら1週間もたたないうちに発狂してしまうと思うけれど、自発的にやっている分にはある程度持ってしまうのかもしれない。人間の構造は不思議なものだと思った。

「ベルエポック」という作品は、婚約者を亡くして郷里に帰る友達の引越しの手伝いをする話。描写は淡々としているが、最後になってその平凡な一日の表皮がぺろりとめくられるような筋書きになっていて印象に残った。

「愛なんかいらねー」はスカトロ嗜好の男の話。スカトロがかなりリアルに描写してあるので、その他の作品の「さりげなさ」とか「淡々」といった雰囲気からかなり隔絶している。あえて一つの作品集にこれをいれた理由がわからない。
コメント
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