危機の宰相(沢木耕太郎 魁星出版)
「所得倍増」を掲げて首相になった池田勇人と、政策ブレーンであった下村治、池田の政治派閥宏池会の事務局長として裏方をつとめた田村敏雄を描いています。
三人がかつて病気やシベリア抑留などのハンデを背負った敗者であったことから説き起こし、やがてその敗者がどのように日本の黄金時代ともいえる10年(1960年代)を築いたかを記録したノンフィクションです。
アメリカとの貿易摩擦が激しかった1980年代前半、下村さんが書いた、日米間の貿易摩擦は日本のせいではなくアメリカに責任があるという旨の本を読んで反発を覚えた記憶があります。
20年以上が経過して、中国の立場が当時の日本とよく似ています。第三者的視点で見るとアメリカの要求は、経済的合理性の追求というよりは、国内産業界に背をおされた政治的圧力に起因していることがよくわかります。日米貿易摩擦も理論や統計数値を重んじた経済学者から見るとアメリカのエゴがよくわかったのだろうな、と今にして思います。
今やノンフィクションの大家ともいえる沢木さんですが、政治・経済にからんだ作品は異色です。しかし、各種資料の読み込みや丹念なインタビュウといった、対象に向かう姿勢はどんなテーマでも変化していません。
「所得倍増」を掲げて首相になった池田勇人と、政策ブレーンであった下村治、池田の政治派閥宏池会の事務局長として裏方をつとめた田村敏雄を描いています。
三人がかつて病気やシベリア抑留などのハンデを背負った敗者であったことから説き起こし、やがてその敗者がどのように日本の黄金時代ともいえる10年(1960年代)を築いたかを記録したノンフィクションです。
アメリカとの貿易摩擦が激しかった1980年代前半、下村さんが書いた、日米間の貿易摩擦は日本のせいではなくアメリカに責任があるという旨の本を読んで反発を覚えた記憶があります。
20年以上が経過して、中国の立場が当時の日本とよく似ています。第三者的視点で見るとアメリカの要求は、経済的合理性の追求というよりは、国内産業界に背をおされた政治的圧力に起因していることがよくわかります。日米貿易摩擦も理論や統計数値を重んじた経済学者から見るとアメリカのエゴがよくわかったのだろうな、と今にして思います。
今やノンフィクションの大家ともいえる沢木さんですが、政治・経済にからんだ作品は異色です。しかし、各種資料の読み込みや丹念なインタビュウといった、対象に向かう姿勢はどんなテーマでも変化していません。