蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

イッツ・オンリー・トーク

2006年08月23日 | 本の感想
イッツ・オンリー・トーク (糸山秋子 文春文庫)

躁鬱病を治療しながら、蒲田にアパートを借りて暮らしている女性の行き当たりばったりの性生活を描く。

躁鬱病って“気のせい”とか“性格”の一種で、病気とはいえないんじゃないかと思っていたのだが、私の周囲でも鬱病で会社を長期間休んでいる人が最近何人か出てきて、その病状がかなり深刻なものであることや、薬を飲むとある程度治療できることを聞き、原因も治療法もある程度解明できている病気であることが理解できてきた。

著者自身もこの病気の患者とのことで、気ままに良くなったり、悪くなったりする病気とうまくつきあおうとしている主人公に、著者の経験がうまく反映されている。一種の闘病記なのだが、じめっとしたこところはなくてドライな、ある意味今ふうの小説になっている。

中ごろから登場する“合意済み”の痴漢をする男の設定が秀逸で、作品を魅力的にしている。
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